ネット上で中傷被害に遭った際の対策として注目されているのが、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)の「誹謗中傷ホットライン」だ。ネットで相談を受け付け、誹謗中傷に当たると判断した書き込み等は、本人に代わり、プロバイダーに投稿削除の依頼を無料で代行してくれる。SIAによれば、今年1月からの半年で1119件の連絡が寄せられた。そのうち「死ね」「生きている価値はない」といった誹謗中傷や、被害者になりすまして行われた誹謗中傷など418のURLの削除等の要請をプロバイダーに行い、262のURLの投稿が削除された。削除率は約63%だ。SIA事務局の吉井まちこさんは言う。
「削除されるケースがあるので、一人で悩まずに連絡してほしい」
数百万円の損害賠償も「6秒ルール」で冷静に
また、総務省の「違法・有害情報相談センター」では、「削除したい」「身の危険を感じる」といった悩みの内容に従い、無料で専門的なアドバイスを受けられる。
インターネットは「諸刃の剣」だ。クリックしただけで、誰もが、「被害者」にも「加害者」にもなり得る。中傷する側にならないためには、どうすればいいのか。
専修大学の岡田教授は、「教育が大切」と説く。迷惑行為をした動画のSNSへの投稿や、投稿者を特定して非難するような最近のケースを見ていると、ソーシャルメディアがどのようなメディアなのか十分に認識していない人が多い印象を受けるという。
「飲み屋で他人の悪口を言っているのと同じ感覚なのだと思います。しかし、ソーシャルメディアに書き込むと、情報は一気に拡散します。それが相手を傷つけることに結びついていません。官民において総合的に対策を講じていくことが重要ですが、規範意識を高めていくためには、ソーシャルメディアに対するリテラシー向上や、それを実践できる教育が何よりも重要です」(岡田教授)
ネットメディア論が専門の国際大学GLOCOMの山口真一准教授は、大切なのは「他者の尊重」と語る。
「つまり、自分がやられて嫌なことを他人にしないよう心掛けることが重要です。そのためには、投稿する前に文章を読み返し、自分が言われて嫌なことを書いていないか確認する癖をつけてほしい。また、投稿が侮辱罪や名誉毀損罪などに問われれば、数十~数百万円の損害賠償を請求されるなど、自分にも返ってきます。そのことも忘れないでほしい」
自分の感情を吐き出すツールとしてネットを使うのではなく、意見を発表する場として使うことが大切──。そう話すのは、ネット上の誹謗中傷に詳しい、慶應義塾大学大学院KMD研究所所員の花田経子(きょうこ)さんだ。