入り組んだ石畳の路地を散歩するのが楽しい「神楽坂」。東京にはたくさんの坂があるが、坂の名前は江戸時代に付けられたものも多いという

 赤坂、白金台、市ケ谷、飛鳥山……。普段何げなく口にする東京の地名だが、その多くが地形に由来していることは知られている。建物がびっしりと並んでいるので地形を意識することはあまりないが、実は都心は高低差があって坂が多く、東京23区には名前が付いた坂が900以上もあるという。

【写真】お堀を挟んで両側が高く、谷間に位置する「谷」の町・市ヶ谷

 刊行されたばかりのガイドブック『ハレ旅東京24-25年』は、ハリー・ポッターの体験型施設「スタジオツアー東京」のほか、続々誕生する新名所やグルメなどの話題スポットを徹底解剖しつつ、東京にまつわるさまざまな「うんちく」も紹介。この記事では、東京の街歩きが面白くなる“地名トリビア”を紹介したい。

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「もっと平らな土地だと思っていたのに、坂が多くてビックリ!」。初めて東京を訪れた人は、こう感じることがあるかもしれない。東京の区部は武蔵野台地の東端に位置しており、平均で20メートルの標高差がある。そこには、主に河川による浸食でいたる所に切れ込んだ部分があって、台地と低地が複雑に入り組んでいる。江戸時代、そのような所に町をつくったので、坂が多くなってしまったのだ。

 現在は、「山の手」といえば、“垢抜けて、ちょっとおしゃれなエリア”で、「下町」といえば“気さくで庶民的なエリア”というイメージだが、かつては読んで字のごとく、「山の手」は台地の上で、「下町」といえば台地の下に広がる土地のことを指した。

 江戸時代に名付けられた土地は、単純に山の上(標高が高い所)にあった場所に「台」「丘」などが付けられ、「坂」を挟んで山の下(標高の低い所)に「谷」、平らな下町から見て盛り上がった場所に「山」が付けられた。そのほか「池」「沼」「洲」など、地名の一部から、かつての地形が想像できる場所も多い。一例を紹介しよう。

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線路に沿って盛り上がる緑の小山