また、大国を自認する中国としては、インドに代表されるグローバルサウスとの関係を維持、発展させ、“良い中国”のイメージを作る必要がある。グローバルサウスといっても国によって立ち位置は異なり、ラオスやカンボジア、パキスタンなどのように中国と経済的に密な国もあれば、経済と安全保障の間で中国との関係に悩んでいる国もあれば、欧米重視の国もある。地域の影響力を巡っても米中が競争する中、中国としては露骨に過剰な貿易規制などに出れば、グローバルサウスの中から中国警戒論が広がってくる可能性もあり、欧米陣営には属さない国々との関係を配慮すれば、なかなか難しい事情も見え隠れする。日本ではどうしても中国警戒論が先行するが、このような中国側の事情も我々は把握する必要がある。

日本は米国とどこまで足並みを揃えるか 

 最後の3つ目は、貿易摩擦でどこまで米国と足並みを揃えるかだ。こういった半導体覇権競争では、日本人の多くは米国側に付いて中国と向き合うというイメージを先行させるが、今後はどこまで米国と足並みを揃えるかを真剣に検討する時期が来るかもしれない。先端半導体覇権競争の核心は安全保障にあるので、この問題で日本が米国にNOの返事をすることは事実上不可能で、今回の対中規制は正当な判断だろう。しかし、中国の世界的な影響力が強まる中、これまで世界ナンバーワンを走り続けてきた米国は年々中国への警戒感を強め、焦り始めている。米中対立は言わば米国の国家としてのプライドをかけた戦いとも表現でき、特に、米国政治、ホワイトハウスは中国との戦略的競争を強く意識している。先端半導体の輸出規制も、ホワイトハウスは経済安全保障という理由を前面に出しているが、今後は対中国を意識し過ぎるあまり、経済安全保障の過剰な利用により、米国の保護主義的な流れが強くなってくることが懸念される。

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米国の保護主義的な動きには一定の距離を