中国はガリウム生産で世界の9割、ゲルマニウム生産で7割を占めるとされ、代替国への依存を強化していけば影響は限定的との見方が強いが、日本企業の間でもガリウムなどを輸入する専門商社などから心配の声が聞かれる。先端半導体は中国としては是が非でも獲得したいものであり、今後先端半導体を巡って覇権競争がエスカレートするだけでなく、半導体以外の分野にも大きな影響が出ることが懸念される。実際、福島第一原発の処理水放出により、中国は日本産海産物の輸入を全面的に停止したが、高まる反政府感情を外へ逸らしたい狙いが第一だろうが、日本に対してもかなり貿易規制の面で不満が募っていたと思われる。

地政学的な観点からの3つのポイント

 以上のような情勢の中、今後の動向を巡り、地政学的な観点から以下3つのポイントを抑えておく必要があろう。1つ目が、中国側の捉え方の変化だ。これまでの米中貿易摩擦では、米中双方が輸出入規制などを武器に攻撃し合い、それによって摩擦が拡大するというイメージが強かったが、最近それにも変化が見られる。今回のガリウム・ゲルマニウム規制が発表された直後、中国共産党系の機関紙「環球時報」は7月4日、同規制に関連し、「米国とその同盟国は中国による輸出規制に込められた警告に耳を傾けよ」と題する社説を掲載した。これまでのエピソードから、この同盟国に日本が該当しない可能性はゼロに等しく、軍事や安全保障という領域だけでなく、中国が経済や貿易の領域でも日本を対立国と認識しつつあると言えよう。

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