「AFURI」の醤油ラーメン
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 神奈川県伊勢原市の酒造会社「吉川醸造」が販売する日本酒「雨降(あふり)」が、ラーメンチェーン店「AFURI」から商標権を侵害しているとして提訴された問題が論議を呼んでいる。両社の「あふり」の由来は、地元で愛される山の別名だ。その土地にゆかりがある両社が、その土地の美しい山の呼称をめぐり争いになった事態。山に鎮座する古社「大山阿夫利神社」の関係者は複雑な胸中を語る。

【「私、間違ってるでしょうか?」と反論したAFURIの中村社長】

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 都心からのアクセスも良い伊勢原市には計3市にまたがる「大山」がある。古来から「雨降山」(あめふりやま)と呼ばれ、雨乞いや五穀豊穣祈願が盛んだった。その「あめふり」が転じて「阿夫利山」(あふりやま)や「雨降山」(同)の別名が定着したとされている。

 その美しい山の中心的存在として有名なのが2200年以上前に創建されたと伝わる「大山阿夫利神社」だ。一帯は多くの観光客でにぎわう神奈川県有数の観光地である。

「『あふり』という名が今まで通り、地元をはじめ多くの人に親しまれるものであってほしいと切に願います」と複雑な思いを話すのは、その大山阿夫利神社の広報担当者。

なぜなら、今回、騒動となった商標をめぐる両社の争いの根っこは、この地に関係するからだ。

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『あふり』は地域・歴史・文化に根差した名称