一方のAFURI社の中村比呂人社長はSNSで、「何度考えても、我々はビジネスのルールに則った正当な手続きを踏んでるだけなんですよね。毎朝、お水を変えてご挨拶をしている阿夫利神社の神様のお札の前でも、『おれ胸張って居られるな』と思うんですけどね。どうなんでしょう?私、間違ってるでしょうか?」と反論した。
一連の騒動について、ネット上ではAFURI社側が批判にさらされている。「傲慢」「商標ゴロ」などと厳しい声も上がる。だが、商標に詳しい専門家からは、AFURI社側の商標登録の経緯や、吉川醸造への対応には何ら問題がないとする冷静な指摘もあり、一部ネットユーザーが感情論に走ってしまっている一端も垣間見える。
前出の大山阿夫利神社の担当者は苦しい胸中を明かす。
「企業同士が係争中の案件であり、それぞれのご事情があると思います。また私たちも社会の一員として司法を守る責任がありますので、勝手にどちらが良い悪いなどというお話はできません。ただ、『あふり』が地元で親しまれる言葉であり続けるために、ことの推移は見守っていきたいと思っています」
そして、こう続けた。
「この地でさまざまな活動をしていたり、土地の恵みを生業にしている方々もいます。そのみなさんで、もっと地元を盛り上げていきたいというのが本音です」
担当者によると、両社とも神社とは知った間柄だという。争いになった以上は司法判断に委ねるしかないが、古くから人々に愛され、あがめられてきた美しい山に、そもそも争いごとは似合わないのだろう。
「『雨降って地固まる』。そうなってほしいと願います」
「あふりやま」とともに生きてきた担当者は、最後にそんな願いを口にした。
(AERA dot.編集部・國府田英之)