大勢の観客が詰めかけるフジロック・フェスティバル
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 アメリカの三大ロックフェスの1つ「コーチェラ」にK-POPアーティストのBLACKPINKが出演、アジアのアーティストとして、女性グループとして初めてヘッドライナーを務め話題になったのは2023年4月。新しい価値観で多様性を受け入れるロックミュージックはどのように誕生したのか。その背景にはキリスト教が深く関わっている。

 8月に刊行された『ビフォーとアフターが一目でわかる 宗教が変えた世界史』(監修・祝田秀全/編集・かみゆ歴史編集部)は、「宗教が人類史においてどんな役割を担い、どのように歴史を変えてきたのか」を、オールカラーで丁寧に読み解いている。アメリカの若者の〝キリスト教離れ〟が、「カウンター=カルチャー(対抗文化)」の象徴ロックを生み出した経緯を、本書から抜粋して紹介したい。

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 第二次世界大戦を経て、米ソ冷戦の時代を迎えたアメリカでは社会変動の動きが活発になる。それまでのアメリカ社会は主に古い家系の白人男性に支配されており、その背景には保守的なキリスト教会がもたらした道徳意識があった。

 しかし1950年代以降、こうした保守的な宗教的倫理観は、あまりにも時代遅れなものとして否定される。特に新しい価値観を求める若者を中心に〝キリスト教離れ〟がみられるようになった。戦後間もなく生まれた若者たちの多くはカウンター=カルチャーに熱中し、新しいアメリカを目指していく。

キリスト教世界に反抗したカウンター=カルチャーが若者の間で流行。ロックミュージックはその象徴となった

 1960年代になると、アメリカでは黒人差別に反対する公民権運動が高まっていく。運動はさらに他の少数民族や、男女差別に反対する女性たちの間にも広がり、自分たちの権利を求めて主張するようになった。彼らを支持したのは、かつてない規模の若者たちだった。公民権運動は1960年代後半からのベトナム反戦運動とも結びつき、若者を中心に高揚する。

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保守層の危機感が生み出したもの