例えば、「処理水は危険」といった科学的根拠に基づかない情報を流し、「岸田政権のやり方がおかしい」といった声を国民から上げさせることで、国内の分裂を引き起こしていくという。川島教授は、こう説明する。
「中国はこうした工作を台湾などに対して日常的にやっていますし、昨年には米英と新しい安保の枠組みである『オーカス』を作ったオーストラリアに対しても行っていました。そして今回、日本に対しても牙をむいたということです。日本各地に中国からの迷惑電話がかかっているのは、その作戦の一つと見ていいでしょう」
秋には日中首脳会談が行われるという見方もあったが、今のような状況では厳しくなったと言える。そしてこの問題は今後、どうなるのか。
「日本としては国内外に対して科学的な、客観的な根拠に基づいて中国以上に自らの正当性を訴えていく必要があります。また、今後中国は水産物の禁輸以外にも経済制裁的なことをやってくるでしょう。日本は中国市場に頼らない、あるいはこうしたチャイナ・リスクを踏まえた経済構造をつくるなど、対策がいっそう必要になってくると思います。日中ともにいまの姿勢を簡単に崩すことはないでしょうから、対立した状況は一定程度長期化すると見ています」
この状況をどう打開するのか。改めて日本の外交力が問われている。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)