作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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いやあ、やってしまいました。夏風邪です。ラジオや誌面で健康管理を呼び掛けながら、自己管理が不十分だったなんてお恥ずかしい。
いや、こういうことで恥ずかしがってはいけない。24時間働けますか、の価値観は平成で終わらせないと。しかも、今回は本当に突然だったんです。「突然」の前にはどうしても「ラブ・ストーリーは」とつけたくなってしまうのが昭和生まれのサガでして、今回は「ノドがいがらっぽいな」から「発熱」までがあっという間でした。いうなれば、令和の発熱は突然に。
コロナもまだ収まっていません。また増えてきた体感もありました。嫌だな~寝ていたら治らないかな~とうだうだしているうちに、唾も飲み込めないほどノドが焼けるように痛くなるばかりか熱がどんどん上がってきたので、厚生労働省が推薦する抗原検査キットで確認。陰性。
念のため、翌日は発熱外来でチェック。陰性! ホッとはしましたが、腫れあがった扁桃腺についた名はウイルス性上咽頭炎。ノドにウイルスがくっついて炎症を起こしている状態でした。
お薬も処方してもらい、帰宅して昼間から就寝。しかし、ノドが痛くて眠れない。映像を見る気力体力もなく、オーディブルを聴いていました。体調がイマイチな時、朗読はやさしく寄り添ってくれます。執筆に携わる身としては身も蓋もないことを言いますが、あまり興味がないジャンルのもののほうが気楽に聴けます。
そこで、はたと思うわけです。毎日のラジオで「病気療養中の方」と呼び掛けてはいるけれど、日常生活がままならぬ人が聴くに堪えうる放送を、私はできているだろうか。
眠くはないが、横になっていないと耐えられない。無音だとつまらないが、音楽を聴くのは疲れる。人の話し声がちょうど良い。いまの私はそんな感じ。そして、常にそういう状態にある人たちのためにも、ラジオは存在します。