春、新しい何か稽古ごとを始めた人、、始めそこなってしまった人も多いかもしれません。通信教育の宣伝もこの時期さかんです。もちろん、どんな分野でも師について教わることは大切ですし、独学は妙な癖がついてするべきではない、とも言われます。
でも一人学びの楽しさと気楽さもまた捨てがたいものです。「書」の独学の方法を紹介します。

ゆっくりと墨の香りを楽しみながら
ゆっくりと墨の香りを楽しみながら
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書の「役にたたない」楽しみとは? とにかく始めてみよう

「美しい字」を書くことができれば、他人や社会から信用されて、尊敬される…そのことは確かでしょうが、たとえば無心になって筆を動かしているとき、思うような線が書けたとき、自分の好きなフレーズを自分のイメージで書いてみたとき、書き損じの山がたまってきたとき…「書」の楽しみは、必ずしも「役にたつ」ことばかりではないとも言えそうです。
そうした楽しみを味わうには、必ずしも師匠につく必要はありませんし、通信教育を始めなくてもかまいません。ちょっとした道具と手本を揃えればすぐにできます。何を揃えればいいのでしょうか? とりあえず最低限こんなふうに揃えてみてはどうでしょうか。立派なものは必要ありません。下敷きはとりあえず新聞紙かなにかで代用することにして、書道専門の用具店でお店の人に相談してみてください。100円ショップで売っているものでもいいでしょう。

「筆墨硯紙」、そしてお手本を揃える

筆:なんでもいいのですが、中国製の筆を扱っている書道用品店に行けば、「双料写巻」と名前がついた小筆が置いてあると思います。半紙で数文字練習するには適しています。一本数百円からあります。
墨:これも中国製の安いもので結構です。おみやげ品などであまり派手に彩色されたものは、無駄なので、避けたほうがいいかもしれません。また今回は墨汁はやめておきましょう。墨をゆっくりとする時間こそが貴重です。国産でも一丁数百円からあります。
硯:中国製の「羅紋硯」などはこれも数百円から売っています。手のひらに乗る程度のもので、あまり大きくないもののほうがいいでしょう。
紙:1000枚で3000円程度からあります。竹を漉いた中国製の半紙が使いやすいと思います。あまり安いものだとにじみやすいこともあります。1000枚もいらない、というのであれば文房具屋さんで国産の半紙でいいでしょう。

書のお手本=「古典」を選ぶ

いくら自己流でも、手本はあったほうがいいですね。「書」の歴史は中国でいうと、おおよそ3500年、日本では約1200年ほどの伝統があるのですが、そうした過去に書かれた「古典」と呼ばれるものがお手本に適しています。現在では複数の出版社から独習しやすい「古典」の印刷本がたくさん出ています。
どんな文字を書いてみたいですか? 文字にはいろいろなスタイル=書体が存在します。お手本となる「古典」を書体別に仮に挙げておくと、
楷書:「高貞碑」
行書:「蘭亭序」
草書:「書譜」
かな:「高野切」
これにこだわる必要はありません。これらの古典が取り上げられている印刷本を書店で見比べて、好きになれそうなものを選んでみてください。

セオリーにこだわらず書いてみる

筆の持ち方とか姿勢とか、言い始めたらきりがないのですが、必要だと思ったら、こうした基本的なテクニックを説明した教則本を一冊読んでみるのも手です。乱暴かもしれませんが、最初は自分勝手で構いません。
今日の夜は、具体的な方法を紹介します。

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