周囲で反対する人もいたが、立石の固い決意に両親をはじめ、多くの人が賛成してくれた。当初は歌手を目指していたが、演技や歌、ダンスの稽古を重ねる中、2017年ミュージカル「テニスの王子様」で初舞台を踏む。身長181センチ、元消防士の恵まれた体躯は、歌唱と演技、ダンスが必要なミュージカルの世界にはまさにうってつけだった。
「最初は、芝居は恥ずかしいからできないと思っていました。でも、ミュージカルに出合ってすごく好きになったら、楽しくて。僕は新しいことに出合って、それを好きになることで自分の考え方が変わるのは良いことだと思っています。ミュージカルはそれまで僕が出合ったことのないものだったから、今、ミュージカルのステージに立てるようになり、お客さまに作品を届けられていることに、すごく幸せを感じています」
脚本を繰り返し読む
毎日ヨガを欠かさず、筋トレを行い、体力を養う。歌は歌唱指導を受けるだけでなく、YouTubeでミュージカル俳優たちの歌唱を手本に学んできた。日々、基礎トレーニングを重ね、作品に挑む。大切にしているのは、脚本を繰り返し読むことだ。最初は声を出さずにシーンや人物を膨らませて読む。そこから何度も何度も読み返し、深掘りしていく。
「公演回数を何回重ねていても、脚本を読むたびに気づきがあります。僕は脚本を繰り返し読むことに関しては、慣れずに続けていく自信があります。より上を目指したいですし、同じところに納まりたくないと、ずっと思っています」
(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2023年8月28日号