「多くのユーチューバーは個人事業なのですが、有名ユーチューバーはタレント事務所に所属したり、ユーチューバー専門の事務所に所属していたりするケースがあります。まだまだ日本のユーチューバーは世界的に見ると遅れていて、現在世界で5000位くらいの再生があるアカウントで30万人くらいのファンがいますが、日本で30万人のファンがいると国内30~40位にランクされます。日本の市場規模はまだ小さいと言え、それだけまだまだ伸びる余地があるとも考えられます」
現状のユーチューバーの収入源は動画の前に付く広告画像だ。いわばテレビ番組のCMと同じ構図になる。一方、先述のルビー・マーケティング株式会社では、別の手法での収入を考えている。いわゆる「やってみた動画」、つまり、ユーチューバーに商品やサービスを体験してもらい、その様子を動画でアップしてもらうことで広告収入を得てもらうというものだ。同社では、“商品やサービスをアピールしたい企業”と“広告収入を得たいユーチューバー”のマッチングサービスを行っている。
「いま、トップクラスのユーチューバーに広告を頼むと高額な報酬が発生します。そうではなく、数は少なくてもターゲットが絞られた固定ファンがいる中堅ユーチューバーと効率良くターゲットにリーチしたい企業のマッチングを考えていきたい。ひと握りのトップユーチューバーだけが稼げている状況では、この市場は成長しません。せっかく良い動画を作る多くのユーチューバー の方がいるのに、”YouTuber” を単なる一過性のブームにしてしまってはもったいないという思いがあります。そうならないためにも、すそ野を広げていく必要があるのです」
現在、ユーチューバーのファンには小学生が多いという。その一点を見ると広告メディアとして弱さを感じるが、その小学生はわずか数年後には立派な消費者になるのだ。彼らにとって、YouTubeは立派な情報源であり、ユーチューバーはタレントと同じ価値を持っているのかもしれない。先述の中山氏は、こう続ける。
「そのためにも、ユーチューバーも文化として根づいた存在にならなければならないと思います。これから数年でユーチューバーが日本に根づくかどうかが決まります。今はゲーム実況や化粧動画等をメインとするユーチューバーが多いのですが、より多様化したジャンルの方にもスポットライトが当たるようになるとおもしろいと思います。ただおもしろい動画をアップするのではなく、何を撮るか、何をみせるかが問われてくるでしょう」
現在、広告といえば、テレビCMがまず頭に浮かぶ人が多いだろう。しかし、数年後には、広告と言えば“YouTubeの動画”という連想が生まれているかもしれない。動画コンテンツには大きな可能性がある。その可能性には、ユーチューバーの存在も含まれているのだ。
(ライター・里田実彦)

