企業の相談役として、クライアントとなる社長や経営者から信用を得ることが何より必要とされるコンサルタント。これまでデロイト トーマツで12年間コンサルティングに従事し、その後、会社を10年経営してきた安達裕哉さんは、人から信頼されるには「話す前にちゃんと考える」ことが何より欠かせないと言います。当たり前のことのようですが、この「ちゃんと」が具体的にどういうことなのか、教わったことがある人は少ないのではないでしょうか。
それが明確に記されているのが、安達さんが著した書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』。話し方を改善するのではなく"ちゃんと考える"ことに意識を向けることで、思考の質を高め、驚くほど人の心を動かせるようになるといいます。
ここで、同書に出てくる"頭のよさをはかる問題"をひとつご紹介します。デート中、パートナーから「この青の服と、白の服、どっちがいいと思う?」と尋ねられたとき、みなさんならどう答えるでしょうか。「白がいい」と素直に自身の考えを述べたり、「どっちも似合ってるよ!」と答えたりする手もあるかもしれません。安達さんが最も適切な回答だとするのは「白と青、それぞれ、どこがいいと思ったの?」です。
「プライベートでも、同じなのです。友人関係でも、恋人関係でも、"この人、私のことちゃんと考えてくれている"という心情になったとき、また話したいと思うはず」(同書より)
コミュニケーション能力という名の社会的知性は、学歴や才能とはなんら関係ないことがわかる一例ではないでしょうか。ちなみに先ほどの質問に対し、「最近のファッションの流行ってさ......」と自分の知識をひけらかすのは論外。人間は知識があれば披露したくなるものですが、「本当に相手のためになることは何なのか?」と立ち止まり、一緒に考え、自分で気づいてもらうことで相手の腑に落ちなければ、心は動かせず信頼も得られないと安達さんは考えます。この「話す前に立ち止まって注意力を働かせる」ということは、思考の質を高める上でとても大切なことのようです。
こうした話す前の思考の高め方が記された同書は、プレゼンや会議、営業、面接といったビジネスシーンはもちろん、プライベートの場面でも何かと役立つことでしょう。さらに巻頭には、同書の内容を簡潔にまとめた「話すたびに頭がよくなるシート」付き。話す前に少し立ち止まって、このシートに書かれていることを意識すれば、さらなる効果アップが期待できそうです。話し方に自信がない、他人から頼られるようになりたいと考えているならば、まずは知性と信頼を手に入れる思考テクニックを学んでみてはいかがでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]