事件の多くは家庭内で起きている。

 性暴力の多くも家庭内で起きている。

 家族というのは、底なしに暴力的になれるものだということを私たちは様々な事件から知ってはいるはずだが、それにしても、最近の日本で起きている「家族の事件」というものは、もはや乱世の世、羅生門ばりの凄まじさを見せているようにすら思う。

 6歳の子を母親や叔父ら家族4人が殺し、スーツケースで遺棄したとされる神戸の事件は、加害者の残虐性が際立っていて言葉を失うあまりだったが、感想を述べることすらためらわれるレベルで想像の限界を超える猟奇・残虐・暴力性の高い事件が家庭内で噴出している。

 また今年3月には、大津地裁で、57歳の女性が同居中の25歳男性に食事を与えず、大やけどを負わせるなどして死亡させた事件の判決があった。共犯者は21歳の彼女自身の息子で、殺されたのは女性のボーイフレンドだったという。彼女には他にも別の3人の同居男性に対する傷害罪もある。口に食パンを詰め込み窒息させるなどして、脳に障害が残ったという記録もある。私はこの事件が気になって、加害者の実家があった広島まで行くなど個人的に調べていたのだけれど、これほどの猟奇的な事件ですらワイドショーや全国紙が深く掘り下げないほど、今の日本はこんな猟奇的で残虐な家族内事件に溢れているということなのかもしれない。

 歌舞伎役者の猿之助被告の両親に対する自殺幇助罪についても事件の解明が待たれる……と、一応「定型」の言葉を使ってみるが、「事件の解明が待たれる」などということなどあるのだろうか……とどこかで諦めるしかないのが、家族内事件である。家族関係があるからこそ、日常を共にする家族だからこそ加速化される暴力。狂気を含み、猟奇的ともいえるあまりに内省的な思考は、なぜ家族内で熟成されてしまうのだろうか……ということを社会が思考しなければ、このような家庭内の事件はなくなることはないのかもしれない。

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家族の事件の極めつきは……