酒を飲んで川に入るのは論外として、子どもが川に流されたものに気をとられて、追いかけていくうちに深みにはまり、流されてしまうことも少なくない。
「川でサンダルや帽子が流されたら諦めてください、と注意喚起をしています」
担当者は川に潜む「深みの恐ろしさ」を知ってほしいと、と強く訴える。
「川は浅瀬から少し歩くと急に深くなる。ところが、深みに気づいたときにはすでに手遅れなことが多いんです。しかも、深みは岸辺から見ただけでは分かりません。だから、そのリスクを実感できない」
川は安全な場所と危険な場所が隣り合わせで、その落差が激しい。ところが、その実態がなかなか周知されないために、水難事故がなかなか減らないのだ。
「水難事故で毎年多くの人が亡くなっていることはみなさんご存じだと思います。ところが『自分だけは大丈夫だろう』と考える傾向があります。これが『楽観バイアス』です。それを認識したうえで、ライフジャケットを着用したり、川に入ることを回避するとか、適切な対策をとることが大切です。水難事故対策は予防がすべてです。溺れた人をふつうの人が救助するのはほぼ不可能という厳然たる事実があります」(同)
■着衣泳の講習を受けていたが…
では、溺れそうになった場合はどう対処すればいいのか。
一般社団法人水難学会の斎藤秀俊会長は以前の取材(22年7月)でこう語っていた。
「水面に『背浮き』になって、プカプカ浮いて待っていれば、助かる可能性が高まります。ですから、溺れている人を目にしたら、『浮いて待て』と、叫んでほしい。浮いている間に119番通報して救助隊を呼んでください」
「背浮き」というのは、衣服や靴を身に着けたまま背中を下にして浮く方法だ。小さなペットボトルでも有効な浮力が得られるので、それを溺れている人に投げたり釣り具の先端につけて渡したりするのも効果的だ。
斎藤会長によれば、コロナ禍以前はプールを利用した「浮いて待て」教室が全国約8割の小学校で実施されていた。