また茂木氏は10増10減を巡る都内の衆院選挙区に関して、公明党の石井啓一幹事長と折り合えなかったという重大な「失点」もある。少なくとも総裁選に野心を見せる茂木氏を、岸田首相が次期衆院選で巨額な資金を采配することになる幹事長に留任させることはないはずだ。
反対に河野氏については、岸田首相はデジタル相に留任させる可能性が大きいと筆者は見る。河野氏が忙殺されているマイナンバーカード問題はあまりにも深刻で、しばらくは解決する見込みがないからだ。さらに河野氏を担当大臣としてはりつけていれば、国民の批判の矢面に立たされるのはまずは河野氏になる。
岸田首相は7月18日、訪問先のカタールで内閣改造と党人事について「現時点では何も決めていない」と述べた。「岸田内閣の基本姿勢に照らして、適切な人事の時期や内容について判断していく」としているが、岸田内閣の最も重要な姿勢は「延命」であり、岸田首相がもっともやりたいこととされている「人事」を通じて、ライバルを次々と消し去るに違いない。
その果てはどこに行くのか。有能なリーダー不在の国の行く末は、いつの世も悲惨と決まっている。
(政治ジャーナリスト・安積明子)
■あづみ・あきこ 兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。