<ライブレポ―ト>RADWIMPS、8年ぶりとなる国内ライブハウスツアーで見せた原点と現在の交錯
<ライブレポ―ト>RADWIMPS、8年ぶりとなる国内ライブハウスツアーで見せた原点と現在の交錯
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 RADWIMPSが全国5都市のZeppで計10公演を行った【BACK TO THE LIVE HOUSE TOUR 2023】。北米、ヨーロッパ、アジアでツアーを開催するなど世界を駆け巡るなか、「今回、3年ぶりにようやくコロナによる制限のないライブができる状況となった時、僕たちの中で「ライブハウスでライブがやりたい」という気持ちが自然に、でもとても強く湧き上がってきました」というメンバーの想いから実現した、8年ぶりの国内ライブハウスツアーだ。

 この記事では、7月4日のZepp Haneda(TOKYO)公演を振り返る。光の演出が開演を告げるなか、観客が大音量の歓声と手拍子をメンバーに届ける。熱烈な歓迎を受けて、野田洋次郎(Vo./Gt./Pf.)、桑原彰(Gt.)、武田祐介(Ba.)、サポートドラマーの森瑞希、エノマサフミがステージにやってきた。今回のツアーで1曲目に披露されたのは、2020年5月リリースの「ココロノナカ」。先の見えない日々に多くの人が不安や絶望を感じていたあの頃、RADWIMPSから届けられた新曲は私たちの心の灯となった。曲の前半は同期を含めたコーラスによって届けられ、その間、メンバーはじっとスタンバイしている。静かに想いを巡らせているように見える。曲の後半は野田が歌唱。“過去のコロナ”とまではまだ言えないかもしれないが、ロックバンドとそのファンはライブハウスにあった喜びを取り戻した。そして、このライブの向かう先がハッピーエンドであることが今まさに約束された。ライブはまだ始まったばかりにも関わらず、クライマックス級の感動が広がったのだった。

 力強いツインドラムから「なんちって」、さらにバンドのセッション&大画面LEDに映る映像演出から「ソクラティックラブ」へ。何と言っても8年ぶりの国内ライブハウスツアー、そして3年ぶりの声出し解禁。バンドも観客も水を得た魚のようで、天井知らずの盛り上がりようだ。照明が明るくなると、嬉しそうな顔で演奏するメンバーの姿を確認することができた。きっとステージからはファンの笑顔が見えていたはずだ。迫力に満ちたバンドサウンドに、大音量のシンガロング、曲間で叫ばれるメンバーの名前、熱いライブに観客が倒れてしまわないようステージから次々と投げ込まれるペットボトル飲料。野田が「調子はどうだい! 東京!」と投げかけると、観客が「イェーイ!」と反応。絶好調なのは互いに承知のうえでやりとりしているのが微笑ましい。

 2010年以前に発表された初期曲が半数を占めるレアなセットリストも、観客を興奮させる材料となった。「ます。」でも、「ハイパーベンチレイション」でも、「指切りげんまん」でも、イントロが鳴らされた瞬間「あの曲だ!」と気づいた人が歓声を上げているが、同時にほとんどの人が「本当に2023年か?」と驚いていたことだろう。しかしこの強靭なグルーヴは確かに2023年現在のRADWIMPSにしか出せないと、アップデートされた楽曲群に思い知らされる。さらに、うっかり忘れそうになるが、名実ともに日本を代表するバンドになっても、彼らは本来やんちゃなロックバンドだったと、フィジカル剥き出しの音像に思い出させられる。原点と現在が交錯するマジカルな時間が続くなか、「me me she」に入るタイミングでギターの調整のため、演奏を一時中断。生だからこそのアクシデントだが、野田がすぐに機転を効かせ、ピアノの前にさっと座り、「何がいいですかー?」と観客に尋ねた。そうして急遽届けられたのはハナレグミ「おあいこ」のセルフカバー。特別な場面がまた一つ生まれる。

 曲数を重ねるごとに、フロアから飛ぶ「ありがとう」の数が増えていく。対して、野田も「一人“ありがとうございます”がいたな(笑)。こちらこそありがとうございます」と反応。そんな温かい空気の中、ライブ中盤では、野田がピアノ一本で情景を描くインスト曲「かたわれ時」や、バンドと呼吸を共にしながらのバラード「そっけない」が披露された。歌ってほしいと促さずとも、野田がピアノからふっと顔を上げただけでフロアからシンガロングが起こる。そんな些細な場面にバンドとオーディエンスの信頼関係を見る。ここで、野田のピアノによるインタールード。ステージに誰かがやってきたが、暗転のため、誰なのかは分からない。ざわつく会場。すると、特徴的なブレスによって曲が始まり、その人物が歌い始めた瞬間、フロアに興奮が広がった。披露されたのは「すずめ feat.十明」、そして十明の登場である。突然のサプライズに喜びつつ、貴重な機会を逃すまいと、十明の神秘的な歌声に聴き入るフロア。なお、十明はこのライブの翌日、7月5日に野田プロデュースによるデビュー曲「灰かぶり」をリリースした。

 「すずめ feat.十明」を終えると、桑原と武田がバトルを繰り広げるように交互にソロを披露。野田の煽りに桑原が凄まじい速弾きで応じたり、野田に頭を前後に揺さぶられながらでも武田は素晴らしいフレージングを奏でてみせたり……とプレイヤビリティとエンターテイナー精神で観客を魅了する。やがて森&エノが加勢し、2対2のバトル、さらに4人でのセッションへと発展。一旦締めたあと、ギターリフとボンゴのリズムから始まったのは「ヒキコモリロリン」だ。イントロの複雑なスキャットまで歌っている観客はさすがとしか言いようがない。そしてこの曲の最中にも各メンバーのソロタイムが設けられ、観客も、野田も、さらにノリノリになる。フロアの方に歩み寄るも、「こっち来るとサウナの入り口みたいな……熱風……(笑)」と笑う野田。「最高だな。まだまだ歌っていいですか? もう一人ゲストを呼んでいいですか?」と続けると、始まったのは「KANASHIBARI feat.ao」で、本日2人目のゲスト・aoが登場だ。二声の掛け合わせによってピュアで危うい世界観を届けたあと、野田は、彼女が優れたボーカリストであると同時に、優れたソングライターでもあることに言及してから送り出した。

 映画『すずめの戸締まり』のサウンドトラックに収録されているが、映画本編では使われていない楽曲「Tamaki」は、野田が歌い始めた瞬間、やはりRADWIMPSにとって特別な曲なのだと感じさせられる説得力があり、歌詞に合わせて照明が色づく演出も印象的だった。桑原が爪弾いていた「Tamaki」アウトロのリフが数小節かけてフェードアウト、それを引き継いで野田がピアノで新しいメロディを奏でる――というライブアレンジを経て始まった「オーダーメイド」は、歌詞の物語と連動したアニメーションとともに演奏。光を思わせるギターの音色、ツインドラムならではの立体的な音像、ベースが引っ張るワルツ部の疾走感、生命力。野田の歌とピアノに収束するラストシーンまで、全てがとても美しかった。

 「Zeppという密な空間でみんなの顔を見ながら演奏させてもらえて幸せです。今日は本当にありがとう!」(武田)、「今日は珍しく開演前にドキドキして。そのくらい気持ちが高ぶっていたんですよ。だけどみんなの声を聴いたらホッと安心して、音楽の中ですげー自由に泳げてます」(野田)と実感を語りつつ、「ここからめちゃくちゃスーパーアガってくので、最後までよろしくお願いします!」(桑原)と投げかけながら、ラストスパートをかける。「8年経つと東京も大人しくなるなあ! 俺の知ってる東京はなくなったんですね!」(野田)という愛情しか感じない煽りが観客の気持ちを盛り上げたのは言うまでもなく、「05410-(ん)」でも「有心論」でも大きな熱狂が生まれた。この曲のここでシンガロングが起きたとかではなく、もはやみんなずっと歌っている。熱量マックスで迎えた本編ラスト、「お前らに会心の一撃を見せてやる!」(野田)と繰り出されたのは「会心の一撃」で、止まない手拍子に応えて再登場したメンバーが「ここに立ってみるとやる曲違う気がしてきた」(野田)とアンコールに予定になかった「トアルハルノヒ」を選んだのも最高だった。野田がギターを掻き鳴らしながら<ロックバンドなんてもんを やっていてよかった/間違ってなんかない そんなふうに今はただ思えるよ>と歌い始める。このフレーズを筆頭に、全歌詞が刺さってしょうがない。こっちだってロックバンドを好きになってよかったよと、感慨とともに噛みしめたくなる。そしてパーカッシブな曲調に血沸き肉躍る「DADA」によるフィナーレ。長い夜が明けたことをファンとともに祝うライブハウスツアーは、熱狂の下、幕を閉じたのだった。

Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by Takeshi Yao

◎公演情報
【BACK TO THE LIVE HOUSE TOUR 2023】
2023年7月4日(火)
東京・Zepp Haneda(TOKYO)
<セットリスト>
01.ココロノナカ
02.なんちって
03.ソクラティックラブ
04.ます。
05.ハイパーベンチレイション
06.指切りげんまん
07.me me she
08.かたわれ時
09.そっけない
10.すずめ feat.十明
11.ヒキコモリロリン
12.俺色スカイ
13.KANASHIBARI feat.ao
14.Tamaki
15.オーダーメイド
16.05410-(ん)
17.有心論
18.会心の一撃

EN1.トアルハルノヒ
EN.DADA

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