奈良市で参院選の演説中に安倍晋三元首相が銃撃されてから7月8日で1年になる。ただ、殺人の罪に問われている山上徹也被告の裁判については、公判前整理手続きもまだ始まっていない状況だ。事件当時、山上被告が犯行に至るまでの様子を間近で見ていた関係者が当時の様子を振り返る。そして、山上被告の現状と今後について伯父が語った。
「なんかおかしなやつだな、とはずっと思っていたんです」
奈良市の近鉄大和西大寺駅前北側のロータリーでそう振り返るのは、元警備員のAさん。
昨年7月8日午前、Aさんは工事中のロータリーで警備員として仕事にあたっていたという。事件はその最中に起きた。
Aさんは、山上被告が安倍元首相の方へ動き出した瞬間を見ていた。
「私の受け持ちの場所から数メートル先で山上被告はかばんを手にしていました。その数メートル先には警官もいました。みんなが演説を聞いているのに、山上被告は安倍元首相に注目するわけでもなく、様子が変だったので気にはなっていました」
Aさんが続ける。
「安倍元首相がマイクを握ってしばらくすると、山上被告は、横断歩道もない、車が走っている車線を急に横断しはじめたんです。SPは何人もいましたが誰も止めませんでした。山上被告が黒っぽい筒のようなものを取り出したんです。いったい何をするのかと思ってみていたら、抱えるようにして……」
2度の発砲音、立ちこめる煙、焦げたにおい。Aさんは今でも覚えているという。
ロータリーは現在、工事が終わって整備され、当時の様子はうかがえないが、Aさんは「たまに現場近くを通ると、思わず震えますよ」と話す。SPに地面に押さえつけられ、声を発することもなく、抵抗もせずに顔をゆがめていたという山上被告。
現在は大阪拘置所で裁判を待つ身だ。
6月12日、山上被告の第1回の公判前整理手続きが、奈良地裁で行われる予定だった。山上被告も参加する意向ということで、各メディアも注目していた。