時空を超えた“スターマン”、デヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画が公開される。財団が初公認した全40曲の楽曲と未公開映像で描き出すのは、ボウイの存在そのものだ。異色の本作について、ブレット・モーゲン監督に聞いた。
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「デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」は、デヴィッド・ボウイ財団が初めて公認したドキュメンタリー映画だ。本人の楽曲が全40曲、さらに未公開映像もふんだんに使われている。
本作はボウイのいわゆる伝記映画ではない。彼のパフォーマンスやインタビュー映像など、膨大かつ貴重な音源や映像を紡ぎながら、ボウイの人生を貫いた精神の旅を追い、見るものに彼の存在を追体験させるような異色の作品だ。モーゲン監督はニルヴァーナのフロントマン、カート・コバーンのドキュメンタリー「COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック」でも知られる。
──財団から公認を得て制作に至った経緯は?
「2007年、デヴィッドに会って、ハイブリッドなノンフィクション映画を一緒に作ろうということになっていた。世界をツアーしながら映像を流し、そこで彼がパフォーマンスをするという方法を考えていたんだが……。本作のような体験型の映画を思いついたのは、カート・コバーンのドキュメンタリーを制作した時。観客の反応を見てIMAXシネマなら最高の音楽体験が届けられると発見したんだ。デヴィッドの死後、そのことを遺言執行人に説明した。デヴィッド・ボウイ財団は膨大な資料を所有していたが、その使い道を決めかねていた。そこで僕の案がボウイ自身の要望にふさわしいと判断するに至ったんだと思う」
──映像素材はどのくらいあったのですか?
「大量にあった。1日15時間、週6日見るというペースで見終えるのに2年かかった。一人で全部見た。孤独な作業だったよ」
──「COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック」は自己破壊の記録のようなものですが、本作はその対極で、人生を賛歌しているように思えます。