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 パソコンやスマートフォンを使っていると、カタカナの業界用語に出くわすことが多い。普通の日本語で書いたりしゃべったりしてくれればいいのに…とも思うが、どうも日本語ではうまく表現できないものが、そのカタカナには込められているようだ。そこで、今回はいまさら聞けないIT用語について紹介してみたい。

 まず、「クラウド(cloud)」という言葉から取り上げよう。

 あるオフィスの昼下がり、A部長がパソコンを眺めながら、部下2人(B課長とC平社員の関係)の会話を聞いている。どうやら、総務畑で育ってきたA部長はIT用語に疎いようだ。

C平社員「例の案件のデータ、クラウドにあげておきました! 取引先にはリンク先を添付してメールします!」

B課長「了解です。私からもデータ確認しておきます。それで進めておいてください」

A部長「(リンク先? クラウド?? 何が何だか、さっぱりわからんな……)」

 クラウドとは、クラウド・コンピューティングを略したもので、簡単に説明すると「データをパソコンやスマホなどに保存するのではなく、インターネット上のサーバーに保存する」ことを示す。

 この会話に登場している「クラウド」とは、一見社内のデータ共有サービスのことを指しているように思うかもしれないが、少し違う。ただの社内のデータ共有であれば、B課長とC平社員との間だけで終わってしまうのだが、「取引先もデータにアクセスできる」というのがポイントだ。

 この場合、B課長とC平社員の間では共有しているデータを全てを見ることができるが、取引先からは平社員が指定したデータにしかアクセスできない仕組みだ。メールで送れないような大容量データをやりとりする時にうってつけのサービスだろう。

 次に「バッファ(buffer)」という言葉を紹介しよう。

 無事、取引先にデータを納品できたようで、取引先から次のデータのスケジュールについて確認があった。

C平社員「取引先から次のデータを1週間後までに送ってほしいと言われました」

B課長「そうか。なら、こちらの完成は5日後を目標にして、2日くらいバッファを設けるか」

A部長「(今度はなんとなくわかるぞ。猶予とか余裕とかそういう言葉を使えばいいのに)」

 部長の気持ちはごもっともである。最近では、このようにビジネス用語としても使われる「バッファ」だが、もともとはコンピューター用語から派生している。パソコンからプリンターに出力する時、一気にパソコンからデータを送ってしまうと、プリンターの印刷速度に間に合わずデータがパンクしてしまう。そこで、プリンターの印刷速度に合わせてデータを段階的に送ることが「バッファ」という言葉の本来の意味だ。

 ビジネス用語として使われる場合、単に猶予期間とか余裕という意味で受け取っておけば問題はないだろう。

 このように、2つのIT用語を紹介してみた。「バッファ」の例のように、もともとIT用語だったものが、いつの間にかビジネス用語になっているケースもある。ふと考えてみると、他にも当たり前に使っているけど実は……という言葉が思い浮かぶのではないだろうか。

 もうすぐ入社してくる新入社員に、こうしたIT用語の意味を聞かれたとき、ちゃんと答えられるようにしておかないと恥をかいちゃうかも!?

(ライター・河嶌太郎)

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