後半部も、普段は絶対に見られないほど連続でヒット曲を歌ったり、以前、音楽劇で共演した南野陽子やいしのようこらを舞台に上げ、河内音頭を歌ったり、バースデーケーキの火を吹き消したりという異例の演出はあったが、MCはきわめて簡素なものだった。そう、MC上手として知られる沢田だが、昔からこういう大事なステージではグダグダと"お気持ち"を表明するようなことはしない。百の言葉を重ねるよりも、選曲やステージング、演出であり余る思いをぶつけるのが沢田のやり方なのだ。
ラストに披露したのは、これまでもここぞという時に歌われてきた思い入れあるナンバー「ラヴ・ラヴ・ラヴ」。そこでステージから客席に銀テープが打ち出されるという演出があった。そのテープには「ありがとう!サンキュー!ありがとうね!!沢田研二」と沢田の自筆が印字されていた。これこそが沢田がファンに伝えたい全てのことだったのだろう。もちろんそれはファンたちにも十分に伝わっている。客席最後部から見ていたが、ライブを通しての沢田とファンたちの盛り上がり、一体感、全てが終わった後の満足気な表情はまさに情事。これまで25年間沢田のライブを見続けてきた筆者も赤面するほどの、熱い熱い一夜だった。