ステージから打ち出された銀テープ(ファンのA.Jさん提供)
ステージから打ち出された銀テープ(ファンのA.Jさん提供)

 ジュリーこと沢田研二(75)が6月25日、さいたまスーパーアリーナで『まだまだ一生懸命』ツアーファイナル・バースデーライブを開催した。チケットは完売。同日、WOWOWで放送された中継も大反響で、SNSには往時以上のパワフルな歌声に賞賛の声があふれた。スーパースターの貫禄を見せつけたステージの様子をリポートする。

【写真】この貫禄がスーパースター!沢田研二さんのステージを見る


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「6月25日、さいたまスーパーアリーナ。やるで~!」

 沢田がそう宣言したのは昨年7月24日。東京・LINE CUBE SHIBUYAでのライブツアー「沢田研二2022-2023 まだまだ一生懸命」初回公演でのこと。さいたまスーパーアリーナは、2018年に主催者との契約トラブルによる公演キャンセル、いわゆる“ドタキャン騒動”の舞台となった因縁の地。あの雪辱を果たすため、そして意地を通させてくれたファンに恩返しすべく、沢田は虎視眈々と機会を狙っていたのだ。

 この数年、ファンにとってもドタキャン騒動は大きな懸案だった。その後、コロナ禍によるライブ活動休止やファンクラブ解散があり、一時は「引退か?」という口さがないメディア報道も。長年、沢田を信じて付いてきたファンの中にも「もしかして本当にこのまま……」と不安に思う人が多くいたそうだ。そんな折のリベンジ宣言。人づてに聞いたり、SNSを見ていても、ファンの喜びの大きさは例えようのないほどだった。そしてライブ当日……。

熱気を帯びた会場付近
熱気を帯びた会場付近

 6月25日、JRさいたま新都心駅からさいたまスーパーアリーナにかけての通路は、開場1時間以上前から芋の子を洗うような混雑ぶりだった。道々でファン同士が集まっておしゃべりや写真撮影に興じていたが、長年の“戦友”の邂逅を見ているようでなんとも微笑ましい。今回のライブで沢田が贈る感謝の気持ちと同じかそれ以上に、ファンたちも熱い思いをこの場所に持ち寄っているのだ。

◆百の言葉を重ねるよりもステージで

 ライブは無駄のない構成だった。詳細は『“ジュリー”沢田研二が19000枚チケット完売で「ドタキャン騒動」に決着 「TOKIO」はオリジナルで【ライブレポ】』『“ジュリー”沢田研二の完売ライブに特別出演 ザ・タイガース瞳みのるが語る舞台裏「気負った再結成ではなく」』に記したが、前半部は特別ゲストとして招待した瞳みのる、岸部一徳、森本タローらとのザ・タイガース・ヒットパレード。下積み時代を振り返る旧友たちとのおしゃべりこそ25分超という稀に見る長尺になったものの、それ以外のMCはこの日に至った経緯を完結に説明し、「おかげさまで完売しました!」「サリー(岸部)に助けられた」とファン、関係者に短く感謝を伝えるのみ。

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中将タカノリ

中将タカノリ

シンガーソングライター・音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。昭和歌謡、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性が注目され、楽曲提供も多数手がける。代表曲に「雨にうたれて」など。2012年からは音楽評論家としても活動。数々のメディアに寄稿、出演し、近年の昭和歌謡ブーム、平成J-POPブームに寄与している。2023年5月10日にキングレコードから橋本菜津美とのデュエットシングル「夜間飛行~星に抱かれて~」リリース。

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