さらに、そもそも国内企業の株主への還元度合いは海外企業などに比べて低いと言われている。このため鈴木さんは、東証の要請がなくても、株主総会での株主との対話などを受けて、自社株買いに踏み切る余地がまだあるとにらむ。
企業が買い戻した自社株を消却すると、株式の数はそれまでよりも減り、1株あたりの利益は増える。株式の価値もそれだけ上がると考えられるため、自社株買いは株価の上昇要因になると考えられている。
大手印刷会社の大日本印刷が2月に「PBR1倍超えの早期実現」を掲げると株価は上昇。この方針に沿って3月に大規模な自社株買いを発表したところ、株価は一段と上げ幅を広げPBRは一時1倍を超える場面もあった。現在は0.9倍台から1倍前後で推移している。
このほか2月にシチズン時計、5月に凸版印刷が自社株買いを発表すると、やはり株価は値上がりした。この間、三菱商事や三井物産といった総合商社も、自社株買いやその追加取得を相次ぎ発表している。
とすれば、先回しして自社株買いをしそうな銘柄に投資をしておけば儲かるチャンスになるかもしれない。では今年、これからもまだ実施が見込めそうな銘柄には、どんなところがあるか。
SBI証券投資情報部長の鈴木英之さんが挙げるのが、上の表に示した銘柄だ。
時価総額がある程度大きく、取引しやすい銘柄のうち、PBRや「株価収益率(PER)」、さらに「自己資本利益率(ROE)」といった株価指標の値そのものが低水準、ないしは業界他社に比べて相対的に低かったり、必ずしも低くはないものの、業界内の立ち位置や競争相手などと比べて経営層が改善の余地はあると考えていたりしそうなところを選んだ。
「自社株買いを行うかどうかの判断は、どうしても、それぞれの会社が置かれた経営環境や経営層の考えといった定性的な要因にも左右されます。そこで株価指標の面での絞り込み条件を少し緩めに設定するとともに、昨年7月以降に自社株買いを実施した実績を重視しました」(SBI証券の鈴木さん)