会社ではよく「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」が大事っていうけれど、それをどうやるかが難しいんだ。まして人前でのプレゼンテーションなんてなったら……。上田正仁『東大物理学者が教える「伝える力」の鍛え方』はそんな「話し下手」なあなたのための本である。
たとえばこんな伝言。〈今日、Aさんが出かけたすぐ後、5時半ぐらいに、◎さんから電話がありまして、急ぎだったら携帯番号を教えましょうかって言ったんですけど、急いでないからいいですっておっしゃって、電話くださいって言ってました。あと、メール送りましたので、『よろしくー』って言ってました〉
結局、何なの? これを伝わるように言い直すと〈◎さんからお電話がありまして、メールを確認のうえ、電話がほしいそうです〉
伝言力をアップさせる3原則は、(1)「何を伝えるべきか」立ち止まって考える。(2)結論から先に言う。(3)余計なことを言わない。ううっ、耳が痛~い!
〈「伝える力」は、意識的な努力を積み重ねないと身につきません〉と著者は言い切る。〈雄弁さは必須の要素ではないのです〉。レベル1「用事が足りる伝え方(伝言など)」から、レベル2「聞く気にさせる伝え方(プレゼンなど)」、レベル3「人を動かす伝え方(交渉など)」まで中身はきわめて親切かつ実践的。
特に私が感心したのは、誘いを断る、苦言を呈すなど、言いにくいことを伝えるスキルだった。マジックワードは「言っていいですか」「聞いていただけますか」などの問いかけ。「はっきり言いますが」などの宣言は相手を萎縮させるが「厳しいことを言ってもいいですか」「どうぞ」という問いかけ→同意のワンクッションは相手の心を開かせる。
どんな場合も重要なのは、「幹」と「枝葉」を分けること、「事実」と「意見」を峻別すること。
大学やビジネスの場だけでなく、家族や友人の間でも応用できそう。あ、それと国会の中でもね。
※週刊朝日 2015年3月13日号