■両陛下のアイコンタクト
おふたりは2018年6月、ご結婚から25年の節目にあたって、記者からの質問に答える形でお気持ちを文書で寄せている。そのなかに、夫婦円満のために心掛けてきたこととして、こんな言葉がある。
「相手を思いやり、相手の立場に立って物事を考えること、そして、お互いによく話し合い、また、大変な時にも、『笑い』を生活の中で忘れないように、ということ」
笑いを忘れない――。おふたりが、その言葉を大切にしていることが伝わる。
また、両陛下から伝わるのは、互いを尊重し信頼しあっている点だ。
陛下と雅子さまは、公務のさなかにチラリと目を合わせるしぐさを見せることがある。今回のインドネシア訪問でも何度かあった。
19日にジョコ大統領夫妻がボゴール植物園を案内したあと、天皇陛下が即興でスピーチをすることになった。見事なスピーチを披露しはじめた陛下だったが、突然話を止めて周囲を確認する動作を見せた。雅子さまと視線を合わせると、
「同時通訳ですか? わかりました」
とにこやかにそのまま続けた。おふたりの「以心伝心」の様子に、周囲はあたたかな空気に包まれた。
ジャカルタにあるカリバタ英雄墓地。国のために力を尽くした、およそ1万人の政治家や軍人、文官、そして太平洋戦争後もインドネシアにとどまってオランダとの独立戦争に加わった残留日本兵が眠る。この地を訪れた天皇陛下と雅子さまは、英霊碑前で深い黙とうを捧げて花を供え、残留日本兵の子孫と面会をした。
ここの記帳室では、こんな場面があった。
ペンを手に取った陛下が、そばにいた雅子さまに顔を向けて何かを問いかける。雅子さまはそっと手を添えながら言葉をささやき、陛下は「徳仁」と署名を終えた。
■「だよね」と自然体の会話
こうした光景は、皇太子時代から変わらない。
ご結婚から間もない時期、国際的な大会の開会式におふたりが出席したことがあった。当時を知る人物によれば、こんなことがあったという。