2021年3月、東京地裁に入る河井克行氏=代表撮影
2021年3月、東京地裁に入る河井克行氏=代表撮影
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 2019年の参院選で広島県を舞台に起きた買収事件。公職選挙法違反(買収)の罪に問われ、実刑が確定した河井克行元法相=服役中=から現金を受け取ったとして、同法違反(被買収)の罪に問われている元県議の裁判に、河井元法相が証人として出廷した。刑務所内に臨時で設置された法廷で非公開で行われた。河井元法相は、自身の実刑判決に納得していないと述べ、「政治家の責任ですべてをのみ込んだから刑務所にいる」などと含みを持たせた発言をしたという。

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 河井元法相から現金を受け取ったとされる被買収側で、広島県議を無所属で4期務めた元県議の佐藤一直被告(48)の公判が、6月19日に広島地裁で開かれた。そのなかで、5月31日に栃木県さくら市の刑務所「喜連川社会復帰促進センター」内に臨時で設置された法廷で、河井元法相が証人出廷したことが明かされた。

 佐藤被告の起訴内容は、河井元法相の妻、案里氏=有罪確定=の当選に向けた選挙運動の報酬として、2019年6月に広島市内の事務所で30万円を河井元法相から受け取ったとされる。

参院選で街頭演説する河井案里氏=2019年7月、広島市
参院選で街頭演説する河井案里氏=2019年7月、広島市

 佐藤被告は、これまでの公判と同様、6月19日の被告人質問でも「受け取った現金は選挙運動の報酬ではない」と改めて起訴内容を否定した。

 AERAdotは、5月31日に刑務所内であった河井元法相の証言の詳細について佐藤被告に取材した。

 佐藤被告によると、河井元法相はベージュのズボンに作業服のような上着で現れたという。

「刑務所内の体育館のような場所に長テーブルが置かれて、法廷に見立てたような感じでした。河井元法相は、入ってくると一礼をしました。やせた印象でした」

 裁判の冒頭、河井元法相は、自身の裁判では罪を認めていると問われると、

「全員に選挙買収という趣旨でお金を渡したのではないです。裁判所の外形的な判断で承服できない」

 と否定したという。

 この事件をめぐっては、候補者選考の段階で自民党本部と広島県連の方針が食い違い、選挙期間中も対立が続いた。

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「大型選挙の前には活動費支給されるのが当然と思った」