工藤夕貴(撮影/写真映像部・東川哲也)
工藤夕貴(撮影/写真映像部・東川哲也)

――工藤さんが子どもを持たないという選択をしたのは、幼いころの家庭環境も影響しているのでしょうか?

 というよりは、タイミングがあまりよくなくて。もっと若いときに子どもをつくっておけばよかったんですけど、気がついたら適齢期を過ぎていました。だけど、今の旦那に子どもがいて、できる範囲で一生懸命子育てをさせてもらってるから、それで十分かなって。

 私自身は父が再婚してから実家に帰れなかったから、彼の子どもに対しては絶対そういう家を作りたくなかったんですよね。だから、「お母さんだと思う必要はなくて、お姉ちゃんとか友達みたいに思ってくれればいい。玄関はいつでも開いているから、お父さんに会いたいときは会いに来てね」って言って、家族になったんです。

 でもね、前にその子が本当に困っていたとき、私に相談の電話をくれたんですよ。父親(夫)は怖いから(笑)。それはすごくうれしかったです。お嫁さんを連れてあいさつに来たときも、めちゃくちゃうれしかった。グッときましたね。だから、自分にも子どもがいれば……という後悔は全然ありません。

――今後の人生に望むことは何ですか?

 とにかく気持ちが幸せでいられることが一番大切だと思いますね。世間的な意味での欲がないので。日当たりのいい南向きの平屋に住んで、田んぼと畑を持って、近所に釣りに行って、自分が作ったお米と野菜と自分が釣った魚をしっかり食べる。それが自分にとっての幸せな風景なんですよね。

――波乱の人生を乗り越えて、幸せをつかめた理由は何だと思いますか?

 どんなに病んでいるときでも、私って最低!って自分を嫌いになるような生き方はしてきませんでした。ここでこの人の悪口を言っておけば絶対得するなとか、自分の心のなかで善人と悪人が戦うときも、ぐーっと我慢して。

 私、因果応報を信じているんです。うちの母もおばあちゃんも「天に向かってペッって唾を吐くと、自分の顔にかかるよ」って言っていたので。どれだけそのときに得をしたと思っても、人間って死ぬときまでわからない。「あー、いい人生だったな」って死ねる人が本当に幸せな人だと思うので、そんな人生を歩みたいですよね。今のところは順調です(笑)。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)

●工藤夕貴(くどう・ゆうき)

1971年、東京都生まれ。中学2年生のとき、音楽番組「ザ・ヒットステージ」で芸能界デビュー。歌手やアイドルとして活動する一方、映画「台風クラブ」「戦争と青春」で主演するなど女優の才能も開花させる。89年の日米合作映画「ミステリー・トレイン」への出演を機に、本格的にハリウッドに進出。映画「ヒマラヤ杉に降る雪」では、ゴールデン・サテライト賞の主演女優賞にノミネートされた。ドラマ「下町ロケット」「着飾る恋には理由があって」「山女日記3」など、近年も話題作への出演が続く。自然農法家の顔もあり、静岡県富士宮市で農業や日本酒の醸造、カフェ経営などに取り組んでいる。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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