田津原理音(撮影/中西正男)
田津原理音(撮影/中西正男)

さらに、そのネタを完全にキャラクターになり切って一人コントでやってしまうと、ネタの世界と現実世界が直結しないままで終わってしまう。

ここが「R-1」のポイントでもあると僕は思っているんですけど、ピン芸なので一人コントとかキャラクターになってネタをやることがどうしても多くなってしまう。そうなると、仮に優勝してバラエティーに出た時も、まずは「どんな人間なのか」という商品説明のところから始めないといけないわけです。人間性をネタでは見せていないので。

一方、「M-1」はネタとはいえ、漫才という会話なので、そこで人間性が見えやすい。となると、商品説明はネタで終わっているので“その次”からの話ができる。それがシステムとしての「R-1」と「M-1」の違いだと思っていたので、カードのネタはキャラになるのではなく、素の僕に近い形でやったんです。少しでも僕の地が出るように。

ただ、そんな作戦を立てようがどうしようが、全てはここから僕自身がどんな売れ方をするのかしないのか。それに尽きます。それを見て多くの人が「『R-1』には夢がある」と思ってもらえたら、うれしいばかりです。

繰り返しになりますけど、僕個人の思いで言うと、もう十二分に夢はあるんですけどね。お仕事が増えた分のギャラが5月分の給料から反映されました。これは、もうね、なんというか、夢ありますよ(笑)。

僕はものすごく洋服が好きで、特に古着が好きなんです。そんなに高いものではないものの、これまでは値段を精査して千円くらいの古着しか買ってなかったんです。でも、この前、自分でもびっくりしたんですけど、初めて値段を見ずに好みだけで買いました。

買い物で、何なら最も重視すべき値段を見ずに買う。本当に、もう、この時点で夢ありまくりなんですけど(笑)、一般の方に広く分かってもらえる夢を具現化できるよう、なんとか、なんとか、頑張りたいと思っています。

(中西正男)

■田津原理音(たづはら・りおん)

1993年5月25日生まれ。奈良県出身。吉本興業所属。NSC大阪校35期生。同期はゆりやんレトリィバァ、濱田祐太郎ら。コンビでの活動を経てピン芸人に。ABCお笑いグランプリ決勝進出。「R-1グランプリ2023」王者。6月24日から7月2日まで大阪・Laugh&Peace Art Galleryで初の作品展「どんな人生。」を開催する。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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