田津原理音(撮影/中西正男)
田津原理音(撮影/中西正男)

「ある」か「ない」かでいうと、夢は確実に「ある」んです。でも、それを皆さんに見せないと「ある」とわかっていただけない。今年チャンピオンになった者にはその波が押し寄せてくる。良い悪いではなく、流れとして、そこは確実にあるとは感じています。

例えば、大阪で芸人をしている僕から見たら「ミルクボーイ」さんなんて大忙しだし、「M-1」のみならず上方漫才大賞も受賞され、芸を求められて飛び回っていらっしゃる。僕なんかがおこがましいですけど、うらやましさしかない理想的な売れ方をされていると心底思っています。

ただ、東京のかたやふんわりテレビを見てらっしゃるかたからしたら「最近見ないし、もう消えたんじゃないの」だなんてことまでおっしゃるかたもいます。

何もせずともガンガン目に飛び込んでくる。それくらいの強度がないと「売れている」という判断にならないのも現実ですし、その基準がある以上、なんとか、そういう売れ方をしないと「夢があった」にはならないんだろうなとも思います。

ま、正直な話、僕一人だけの問題なら「夢があったでしょ」でももちろんうれしいですし「夢、ありませんでした……」でもそれはそれで面白い話ではあると思うんです。ただ、このタイミングで今の立場にならせてもらった者として「R-1」のこれからを考えた時に「夢がある」ことを示すしかない。それがリアルな思いです。

なので、今年の「R-1」ではネタ選びからいろいろ勘案したんです。もともと、僕は、フリップネタで「R-1」に挑んでました。しかも、毎年ずっと同じテーマでネタを作って、テーマは同じだけど中身だけをブラッシュアップしていく。そのやり方にこだわってきました。

でも、去年のイベントで「R-1」で決勝に6回行かれたヒューマン中村さんから「ネタを変えたほうがいい」と本当に熱を持って言っていただいたんです。ハッキリ言って先輩から後輩に対してといえども、ネタの根幹を「こうしたほうがいい」なんてことはなかなか踏み込めない領域なんです。それなのに、本当に熱と愛を持って言ってくださった。そこまで言ってもらっているのに、何も変えないのはありえない。そう思って、カードのネタで挑むことにしました。

次のページ
古着の値段を見ないで買えるように