金八先生はその後も時折生徒にビンタすることがあります。そのビンタはほぼ、ビンタの演技ではなく、本当にしているんですね。
そこから話はNHKのドラマ「リミット-刑事の現場から2-」の話になりました。これ2009年に全5話で放送されたドラマなんですが、超がつく名作。
そのドラマの最終話で、森山未來さん演じる刑事と井浦新さん演じる犯人の勝負するシーンがあり、そこがもうかなり熱いんです。そこに、武田鉄矢さん演じるベテラン刑事が出てきて、井浦新さん(当時はARATA)演じる犯人をビンタする。
ここはさすがに、鉄也さんビンタする演技でいこうと思っていたらしいのですが、本番前に、井浦新さんに言われたらしいんです。「鉄也さん、本気でビンタ入れてください」と。躊躇した鉄也さんですが、ビンタしてほしかった理由があった。それは「金八先生にビンタされた生徒はみんな売れるって聞いて」と。え???まさか、ここで金八のビンタがつながる??
そう言われたら仕方ない。本番では本気のビンタ。
このシーン、やたらリアルだなと思ってたんですが、そんな理由があったとは。
鉄也さんとは45分間ノンストップでしゃべりまして。
そして鉄也さん、本番を終えて帰る時に、僕を見て「私が炎上したときにこのラジオでフォローしてくれて。聞いてました。本当にありがとう」と。
わざわざその言葉を言って帰っていったんです。なんて素敵な人なんだ。
その時思わず言いそうになりました。「ビンタしてください!!」
スターってやっぱり。目の前の人を最後の最後まで惚れさせて帰っていく。
■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。