市外のクラブチームに入ることも検討はした。だが、そうすると親の負担が重くなる。母の尚子さんは「共働きですので、遠方のクラブチームに練習や試合のたびに娘を送迎し続けられるのかと考えると、現実的には難しいと感じました」と率直な思いを話す。
星川さんは、中学では女子のソフトボール部に入部。野球とはまた違う魅力がある。それでも、「やっぱり野球ができたらいいなあって、もどかしい思いがずっとありました」
そんな折に耳にした、地元での女子野球チーム立ち上げの話。
チームの始動は昨年の春だったため、チーム側も4月に入学する中学の新1年生を中心にしたチームづくりを想定していた。
「上の学年の生徒には、もし入部をご希望でしたらどうぞ、という遠慮がちなものでした。でも、たとえ『おまけ』みたいな形だとしても、大好きな野球をまたやれるならそれでいいよねって、娘も私も思ったんです」(尚子さん)
結果的にはキャプテンを任され、ポジションは捕手、打順は3番でチームを引っ張っている。中学の部活動と兼部している生徒も多いが、星川さんはソフトボール部でもキャプテンを任され、この日は午後にソフト部の練習が入っていた。
星川さんはこう言い切る。
「野球を続けて良かった。始めたころはイヤイヤでやめようと悩んだこともあったんですけど、今は後悔はまったくありません」
学童野球の投手は変化球を投げてはいけないが、中学生の投手は数種類の変化球を操る。その投手を生かすも殺すも、捕手のリード次第。考えることが格段に増えた。
憧れの選手は同じ捕手の小林誠司(巨人)だという。
「顔がかっこいいよね」という筆者の問いかけにはほとんど興味を示さず、
「肩が強いし、フレーミングの技術(ストライクかボールか微妙な投球を、ストライクに見せる捕手の捕球技術)や配球もすごいじゃないですか」
と夢中で語るその姿は立派な球児だ。
星川さんは来年が受験だが、女子の硬式野球チームがある高校を受験する予定だという。