「TOYS CLUBトミカリミテッドヴィンテージ トヨエース2台セット」。本文に出てくる「北原バージョンのトミカ」がこれだ(写真 北原照久)
「TOYS CLUBトミカリミテッドヴィンテージ トヨエース2台セット」。本文に出てくる「北原バージョンのトミカ」がこれだ(写真 北原照久)

 当時のブリキのクルマを手に取ってみると、そのクオリティーが非常に高かったことに気付きます。今でしたら簡単にプラスチックで作ってしまう所を、エンブレムの部分まで一つ一つ型を作っていました。当然1台のクルマのおもちゃに何十ものプレス型が必要になってきます。しかも組み立ては手作業に頼り、ツメを折ることから始まります。おもちゃとはいえ、決して手を抜くことはなく、品質の高さを守り通した当時のメーカーの方々には敬服すると同時に、そのような努力が日本のおもちゃを世界最高水準に引き上げた原動力になったと思います。

 ブリキに変わる素材が、より大量に生産できるプラスチックやソフトビニールに変化していく中で、ダイキャスト製のミニカーが登場したのは、1959年、旭玩具製作所の43分の1サイズのモデルペット。これが国産初のミニカーとされています。また1961年に大盛屋玩具がミクロペットを発売。のちに大盛屋の型を引き継いで登場したのが米沢玩具のダイヤペット。ただ、この時代の国産ミニカーは、当時すでに輸入されていた外国製ミニカーに比べて、精密さや仕上げなどでまだまだ及ばないものでした。

 そして1970年、現在の主流であるトミカが登場しました。僕のミニカーコレクションの中でも、トミカは数えたことがないくらいで、子どもから大人まで50年も愛され続けていることは素晴らしいことです。

 ビックサイトで弊社が行っていた東京トイフェスティバルでも、何点か北原バージョンのトミカを発売させていただきました。1日だけの古いおもちゃなどを売買をするイベントでも、トミカは大行列ができるほどの人気でした。

 クルマは生活に密着した道具であり、しかも時代時代のデザインや流行が最も反映されるものです。おもちゃのクルマにも懐かしさを感じると同時に、そのクルマを通して、自分たちが経験したことへの懐かしさもよみがえってきます。

北原照久(きたはら・てるひさ)/1948年、東京都生まれ。ブリキのおもちゃ博物館館長。ブリキのおもちゃコレクターの第一人者として世界的に知られ、「開運! なんでも鑑定団」に鑑定士として出演中

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