ピッチャーが投球練習しているときから上岡さんの解説がはじまった。
相手チームの1番バッターの打席に、
「次、フォーク投げなあかん」
「キャッチャー、どこ構えるねん」
とひとり解説を展開する上岡さん。三振を奪うと、
「ほれ、言うたやろ、まっすぐでいけって。言うた通りや」
「ひそかにスタンドからサイン出したんや」
と笑いも忘れずに入れてくる。
試合の終盤、阪神がピンチを迎え、ピッチャー交代の場面。アナウンスされたのは、上岡さんの予想とは違うピッチャーだった。
「阪神の“オーナー”がこいつで行け言うてるのに、中村は」
「打たれるって、ほんまに」
と言っていたら本当に打たれてしまい、2点取られてしまった。
でも、最後に阪神が逆転勝ちすると、
「“オーナー”としては満足や」
「今年はほんまに優勝いけるで。俺がうまく采配するように中村に言うとくわ」
とユーモアを入れて締めた。
上岡さんが選手時代から注目していたのは、今季から再び指揮を執っている岡田彰布監督だ。
早大からドラフト1位で阪神に入団し、中軸選手として活躍してきた阪神の“顔”だ。
そして、その顔は、日本を代表する喜劇役者、藤山寛美さんに「そっくり」と評判だった。
岡田監督が選手時代、上岡さんは、
「岡田は思い切ってやればいい。あかんかったら藤山寛美の娘、直美と一緒に舞台にあがればええねん。ええ役者になれる」
と「べた褒め」していた。
野球場以外でも上岡さんと話す機会があった。
ノックさんの選挙だったと思う。ただ、そこでもマスコミが囲むとほとんど阪神の話題だったと記憶している。
「昨日は代打に●●(選手の名前)が出た。あそこでやで。起用ミスや」
「先発に使っているピッチャーがダメ」
などと話し出すと、やはり止まらなかった。
90年代のころだった。
「よかったわ、江川に勝ったんや!」
といきなり上岡さんから言われたことがあった。なんのことかわからずキョトンとしていると、
「江川や。俺のほうが税金、たくさん納めていた。これで阪神もいける」