20年には阿波踊り改革の混乱などをみて、「徳島がだめになる」と訴えた内藤佐和子氏が新市長に就任したが、新型コロナウイルス感染拡大で戦後初の中止が決まった。21年もコロナ禍の影響で踊り手や観客を県内在住者に限定、日程も短縮するなど縮小開催となった。22年には新しい開催主体である「阿波おどり未来へつなぐ実行委員会」が発足。経済界や文化団体、踊り団体の代表者らで構成され、阿波踊りを将来につなげるよう抜本的な運営に着手した。ただ、この年もコロナ禍が続き、規模を縮小しながら例年通りの日程で開催したが、踊り手ら800人以上が新型コロナウイルスに感染していたことが開催後に明らかになった。

 そして今年。新型コロナウイルスが季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行された。水際対策も緩和され、訪日外国人も増えている。市の幹部は、久々の通常開催に期待を込める。

「天候さえよければ、黒字で運営できて、未来につながる阿波踊りに、ようやく今年から取り組めます。その一つが特別観覧のVIP席なんです。県外や外国人の観光客に、ゆっくりと迫力ある踊りを堪能してほしいと考えています」

 阿波踊りはかつて4日間で、100万人という人出が当たり前のように発表されていた。だが、コロナ禍もあって、昨年の人出は46万人と大幅に減少。人出は天候にも左右されやすく、黒字の確保は至難の業だ。そこで、収益をあげる対策に打ち出されたのがVIP席だという。

 これに対し、「1万5千円も払って見にくる人はいるのか」などと懸念する声もある。毎年、阿波踊りを演舞場で観覧してきたという市民は、

「子供の頃は、一番いい席でも1千円くらいで安かった。VIP席ができると全体的な席数も減り、料金も高くなるのではないか。そもそも高いVIP席に需要はあるのかも疑問。赤字で税金を投入することにならないようにという狙いはわかるけれど……」

 と危惧する。

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“踊る阿呆”だけではやっていけない