運営体制をめぐる混乱や、踊り手の団体「連」と実行委員会の対立、新型コロナウイルス禍による中止など、この数年、ごたごたが続いてきた徳島市の阿波踊り。今年も8月12日から4日間の開催が予定されているが、新たに導入されたVIP席の高額料金が、地元をざわつかせている。
「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」という踊り歌で、よく知られる徳島の阿波踊り。その最大の見せ場とされるのが、「総踊り」だ。阿波踊りの開催中は、市中心部のホールや歩行者天国の道路などで連がそれぞれ踊りを披露するが、総踊りでは有料の「演舞場」に、有名な連が総出で次々となだれ込むように踊りを繰り広げる。阿波踊り最大の見せ場だ。
今年の阿波踊りを主催する実行委員会は、総踊りが行われる南内町演舞場に、1人1万5千円の特別観覧席、いわゆるVIP席を100席用意すると発表した。これまでは最もよい時間帯の座席でも5千円から6千円だったので、その3倍ほどの値段になる。これまであった観覧席の料金も、それぞれ数百円の値上げとなる。
VIP席は迫力満点の総踊りが正面から観覧できることが売り。阿波踊りは時間帯で1部と2部に分けられるため、4日間で計800席のVIP席が設置される予定だ。
これを受けて地元では、「高すぎる」「いい試みだ」と賛否の声が上がっているのだ。
ここで、近年続く阿波踊りのごたごたを振り返ってみる。そもそもの発端は、2017年に阿波踊りを共催していた市観光協会に4億3千万円以上の累積赤字があると発覚したことだった。翌18年5月、市観光協会は破産が確定し、この年の阿波踊りは市や徳島新聞社などで作る実行委員会が主催した。しかし、実行委員会が総踊りの中止を強引に決定したことや市観光協会に赤字の責任を押し付けたことに「阿波おどり振興協会」の有名連が反発し、演舞場外で総踊りを強行する騒動が起きた。19年には総踊りは復活したものの、台風が直撃して2日間の開催が中止となり、過去最大の1億1千万円以上の赤字を計上した。