名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマ・サンダマリさん。夢を持って来日し、最後は国の施設で亡くなった。まだ33歳だった
名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマ・サンダマリさん。夢を持って来日し、最後は国の施設で亡くなった。まだ33歳だった

■根本的な見直しが必要

 STARTの千種さんは、「施設内で起きる問題を可視化していくことが重要」と話した。

「入管が一番恐れているのは、収容されている当事者たちが団結して自分たちに向かってくることです。そのためにも、入管で起きている問題を、収容されている人たちと一緒に取り上げて声にして社会的に明らかにし、入管が変わらざるを得ない状況をつくりあげていくことです。それが、これ以上、施設で亡くなる人を出さないためにも重要です」

 高橋弁護士は、まずは「制度の土台から変えていく必要がある」と指摘する。

「小手先の改革で常勤医師を配置しても何も変わりません。いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」

 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。

「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」(高橋弁護士)

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年7月10日号より抜粋

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