調査会社・MMD研究所の「2015年ウェアラブル端末に関する調査」によると、ウェアラブル端末を知っている人は55.6%、現段階で使ってみたいという人は20%を超えるなど、ユーザーの注目を集めている。
話題となったメガネ型端末「Google Glass」は、残念ながら一般向け発売の中止が発表されたが、腕時計型端末である「Apple Watch」、NTTドコモの「ムーブバンド」など、発売が待たれている端末はたくさんある。
ウェアラブル端末は、情報端末を身に付ける点で利便性は高まる。その半面、リスクはないのだろうか。
そこで今回は、セキュリティー犯罪に詳しいトレンドマイクロの高橋昌也・シニアスペシャリストに、ウェアラブル端末に潜む危険性について話を聞いた。
「ウェアラブル端末では、これまで蓄積されなかった情報を扱うことになります。自分の体重や身長、睡眠時間、今日どれくらい歩いたかといった、これまで以上に詳細でナーバスな個人情報です。ウェアラブル端末は、それらの情報をクラウドに保管して管理します。つまり、常に通信が行われています。通信していると言うことは、情報が漏れるリスクがあるということです」
常に身に付けているからこそ蓄積できる生活に密着したデータが漏れる危険性があるということだ。
だが、身長や体重、自分が歩いた距離がわかったところで、クレジットカードの情報が漏れるよりもリスクが小さいのではないかと思う人も多いだろう。だが、高橋氏は大きなリスクを指摘する。
「歩いた距離を記録することは、GPSで位置情報を記録しているということです。それが漏れると、その人の行動パターンが読めてしまう。この人は毎日、何時頃は家にいないといった情報です。またリアルタイムでアクセスされると、いまは確実に家にいないといった情報がわかってしまう。そこで空き巣に入るといったことが可能になってしまうのです」
常に身に付けているだけに行動が筒抜けになってしまうのだ。空き巣だけではない。ストーカー被害の危険性も格段に増えてしまう。何か対策はないのだろうか。
「ウェアラブル端末に限らないのですが、情報漏えいリスクを高める要因の一つが設定ミスです。いま、企業の重要情報などがネット上に漏れるケースでも、うっかり設定をミスして『誰でも見られる状態にあった』というケースが多いんです。ウェアラブル端末でも、購入したらまず設定を確認して、『何が公開されていて、何を隠しているか』を確認することです。それから、インストールするアプリについては、アプリが利用するデータを必ず確認すること。そのアプリに不要なデータへのアクセスはさせない設定にするなど、自分でデータが漏れる危険性はないのか、意識しなければなりません」
悪意があって情報を盗む犯罪者を止めるにも、自分自身のミスで情報を漏えいさせてしまうことを防ぐためにも、「設定を確認する」「アプリの権限を制限する」「不用意に公衆無線LANを使用しない」といった、わずかな手間が重要になってくるのだ。
その手間を惜しんだとき、ウェアラブル端末のセキュリティーリスクは飛躍的に高まるのだと言える。利便性に潜むリスクへの注意を怠ってはいけない。
(ライター・里田実彦)