全日本に俺が入ったときに「おい、天龍」って話しかけてきて、普通に話していたら、馬場さんが「桜田、天龍に向かって『おい』はないだろう」と怒ったことがあったね。馬場さんからしたら、馬場、ジャンボ鶴田の次に天龍という立ち位置で考えていたからだと思うけど、「いや、俺と桜田選手は相撲の同期だからいいんですよ」って、かえって俺が恐縮しちゃったよ。
俺に日本でプロレスの基礎を教えてくれたのはカブキさんだけど、アメリカで「抱え投げはボディスラム、腕固めはアームロック、足4の字固めはフィギュアフォーレッグロック」という正式な名前とか、いろいろ教えてくれたのは桜田選手だ。
ただ、桜田選手はアマリロに残っていると稼げないと思って、ディック・マードックに相談してオクラホマに行くことになったんだよね。そのときは「なんだよ、冷たいな」と寂しく思ったことを覚えている。それでも、その後もアメリカを転戦してたけど、日本に帰って来てからはSWSでも一緒に戦ったし、ずいぶん長い付き合いになったと思うよ。
俺が見た、アメリカで最も成功したレスラーはやっぱりマサさん、カブキさんだけど、それ以前は馬場さんもいるし、その後もグレート・ムタや中邑真輔も活躍したし、今後もアメリカで活躍するレスラーがもっと出てくれると嬉しいね。
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。