5月5日、石川県珠洲市をM6.5、最大震度6強の地震が襲った。気象庁や専門家からは「流体が関与している可能性がある」という声が上がっている。専門家を取材すると、熊本地震や阪神・淡路大震災でも流体の影響があったという。流体とは一体何なのか。流体が確認されている地域はほかにもあるのか。さらに、首都直下地震や南海トラフ地震など、大きな被害が想定されている地震への影響はあるのだろうか――。
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「以前から大きな地震がこの地域で起こると、警鐘を鳴らしてきました」
こう話すのは、能登半島の地震について詳しい金沢大の平松良浩教授(地震学)だ。平松教授は昨年11月、珠洲市にある小学校の特別授業で「震度6弱以上の大きな揺れが起きる可能性がある」と子どもたちに伝えるなど、地域での防災の啓発活動を行ってきた。
能登半島では、今回の地震の前から地震が活発化していた。珠洲市では2020年12月から地震が頻発。気象庁の震度データベースで震度1以上の地震の回数を調べると、20年12月から今年4月までに318回もの地震を観測している。限られた地域で多発するこうした地震は「群発地震」と呼ばれる。
この原因とみられているのが、「流体」だ。
流体とは、地下にある熱水や火山ガス、マグマのこと。火山のない能登半島では、このうち熱水が地下にあるとされる。地下20~40キロの深さに多くの熱水があり、その一部が深さ10~15キロにまで上昇してきているとみられている。
熱水の温度は300~400度程度で、圧力が高く、地下の岩盤を壊すことで地震を起こす。また、活断層の断層面に入りこむことで、滑りやすくなり、地震を誘発することもあるという。
平松教授はこう説明する。
「2020年からの群発地震によって、M6からM7近くの大きな地震が起きるとみていました。今回のM6.5は、群発地震としては最大規模のものだと思います。ただ、今度は流体によって活断層が大きく動くことも考えられ、そうなるとM7クラスもあり得ます。この規模になると、海底の断層も動き、津波が発生することも考えられる。流体によって大地震が起こりやすくなっていることに注意すべきでしょう」