2016年4月、緊急地震速報が相次いだ熊本地震。ここでも流体が確認されていた。
2016年4月、緊急地震速報が相次いだ熊本地震。ここでも流体が確認されていた。

 能登半島以外の地域でも流体による地震のリスクがないのか、気になるところだ。

 実は過去に国内で起きた大地震でも、地下に流体があったことがすでに確認されている。地殻流体に詳しい東京工業大の中島淳一教授(地震学)によると、2016年の本地震や、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)でも地下に流体があったことがわかっているという。

「熊本地震や阪神・淡路大震災では今回の能登半島の地震のような群発地震はなく、いきなり大きな地震が起きました。流体があると必ずしも群発地震を引き起こすわけではなく、そういった前兆はなく大地震を起こすこともあります」と中島教授は言う。

 現在でも、いくつかの地域で流体が地震に関連していることがわかっている。その一つが、和歌山県北部で起きている群発地震だ。この地域では少なくとも100年前から中小規模の地震が多数起こっている。地震の多さから「地震の巣」ともいわれている。

 もう一つが、大阪湾での地震だ。「深部低周波地震」と呼ばれる火山の近くで観測される地震が、火山のない大阪湾で観測されている。これらの地震について、中島教授はこう説明する。

「能登半島と同様に、和歌山県北部の地下では流体が上がってきており、それが群発地震を引き起こしているとみています。その流体が上昇する過程で大阪湾の深部で低周波地震を起こしている。先の神戸の大震災に影響を与えた流体もここから来ている可能性があります。ちなみに、火山がまわりにない有馬温泉(神戸市)で温泉が湧くのも、この流体の影響でしょう」

 この近辺では、最悪の場合「死者32万人」という大きな被害をもたらすと国が想定する「南海トラフ地震」が警戒されている。流体が南海トラフ地震に影響を及ぼす可能性はないのだろうか。

「南海トラフはプレートの境界で起きる地震なので、内陸の浅いところに上がってくる流体の影響を受けることはないです。一方で、内陸ではいくつかの地域に流体が上昇してきていることがわかっています。流体の影響で中央構造線(国内最大級の活断層)が動きやすくなっていると考える研究者もいます。中央構造線やその周辺の活断層では、かつて慶長伊予地震(愛媛県)や慶長伏見地震(京都府)など大規模な地震が発生しています。改めて注意が必要でしょう」(中島教授)

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首都直下に流体が来ているのか?