AERA 2023年6月26日号
AERA 2023年6月26日号

木村:それしかないというか、調整してられないよね。「できるでしょ」って皆さんが思ってくれていることがうれしいから。ちょっとだけ「おいおい」とも思うけど(笑)、現場に行くと「できるよね?」の圧は伝わってくるから、毎回必死。

蜷川:いわゆる「キムタク」という存在になってから、何十年も経つでしょう?

木村:プレッシャーはあるけど、ストレスは感じてない。だから、面白いんだよね。アニメの主人公になったような気分でワクワクできる。すごく冷たい水か、めちゃくちゃ熱いお湯かの、どっちかが俺は好き。何も温度を感じない場所は興味がないから。

蜷川:私たち、同じ病にかかっていますね(笑)。これだけ経験を積んできたら、手を抜いても回せる場面もあると思うんだけど、それはやりたくない。

木村:うん。

蜷川:すごいよね。拓哉くんのレベルで、すべてのことにある種の恐怖心を持ちながら全力で向き合っているんだから。

木村:そうしたいし、そうじゃないともったいないよ、まじで。ガキの頃は先が見えなくても「行ってみようぜ!」という勢いで進めたと思うんだけど、今もそれは同じで。進んだ先でどうなるかとか、何が待っているかという情報は知りたいと思わないかな。

■経験値があるから何?

蜷川:私もそれはないかな(笑)。若いころは闘争心や劣等感をバネに突き進んできたけど、最近は写真を撮っても「本当に世界って美しいな」と感じるようになったの。一瞬の中に永遠を見る感覚があって、だからこそ瞬間を大切に過ごしたいと思うようになった。50歳になってこんなに世界の見え方が変わるんだってびっくりしてる。長く続けていくためには、フレッシュさを持ち続けることは必要だと思う。たとえ何周目かでも、新しい恐怖感をもって新しいフィールドを探検できる能力というか。だから、経験は積んでいるんだけど、同時に「経験値があるから何?」とも思う。

木村:そうそう! 「で?」って思う(笑)。

(構成/ライター・澤田憲)

AERA 2023年6月26日号より抜粋

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