渡辺明名人(右)が投了し、藤井聡太新名人(左)が誕生した瞬間。藤井は史上最年少名人と史上最年少の七冠制覇を成し遂げた

■藤井八冠の道のりは?

 藤井は名人獲得の直前に、叡王戦五番勝負で菅井竜也八段の挑戦を3勝1敗で退けている。決着局となった第4局では千日手(引き分け)が2回成立する死闘の末の防衛劇だった。

 棋聖戦五番勝負と王位戦七番勝負では、佐々木大地七段の挑戦を受ける。佐々木は順位戦ではC級2組にとどまっているが、実力的にはB級1組か、あるいはA級にいてもなんら遜色はないだろう。佐々木が「下剋上(げこくじょう)」を果たしても、全く不思議ではない。

 八冠目となる王座戦の挑戦者決定トーナメントでは、藤井は現在ベスト8に残っている。永瀬拓矢王座への挑戦権獲得まであと3連勝だ。番勝負ではこれまで一度も敗れたことのない藤井も、一発勝負のトーナメントでは、一度負ければそれまでだ。今期ベスト4進出をかけた村田顕弘六段との対戦は6月20日におこなわれる。準決勝では藤井─羽生戦が実現する可能性があるというのも劇的だ。

「少しでも上を目指せるようにがんばりたいと思います」(藤井)

(ライター・松本博文)

AERA 2023年6月12日号より抜粋

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