AERA編集部
11歳のソフィは、離れて暮らす若き父親カラム（ポール・メスカル）とトルコのリゾート地で夏休みを過ごす。20年後、当時の父と同じ年齢になったソフィが父と過ごした夏の記憶を辿る物語。米アカデミー賞主演男優賞ノミネートほか、世界各国の映画祭で絶賛される注目作「aftersun／アフターサン」。脚本も手がけたシャーロット・ウェルズ監督に見どころを聞いた。
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父を亡くした10代の少女を主人公にした短編映画「Tuesday」を撮った後、2015年に父と娘の関係をもっと深く掘り下げたいと本作の執筆に取り掛かりました。11歳の少女ソフィが父カラムと過ごした夏休みを、父と同じ年齢になったソフィが振り返るという物語。脚本は、座ったら2週間で書けましたが、その2週間にたどり着くまでに4年かかりました。
カラムのプライベートな部分をどのようにゆっくりと明かしていくか、細心の注意を払って仕上げました。カラムには娘に見せていない苦しみがあります。とてもいい父親なのですが、人間としては色々な欠点がある。鬱の部分をどうしていいかわからない。本人がそれを突き放そうとすればするほど、そのまま本人に返ってくる。そこは描きたかったことでした。演じたポール・メスカルには、私が知るカラムについてすべてを話しました。ポールはそれを聞いて一旦忘れた、と言っていました。なぜかというと、カラム自身も自分自身のことを理解していないから。なぜこんなに苦しんでいるのか、いつから苦しんでいるのか、何が理由なのかを本人も把握していない。だからその瞬間瞬間、シーンごとに感情に重きを置いて演じていたそうです。
今作は、私が思っていた以上に多くの観客に共感してもらえたことが一番の驚きでした。改めて振り返ると、私はこの映画で基本的なことを描写したのかなと気づいたんです。人は誰しも誰かの親か子です。だから、見る人はどちらかに感情移入してこの映画を見る。カラムの鬱は観客が自身の体験と重ねて、いかにリアルか、他の作品にはない側面が描かれているか、そんな感想をいただきました。それがとてもうれしかったです。
（取材／文・坂口さゆり）
※AERA 2023年5月29日号
ラリー遠田
鴻上尚史
西崎彩智
