フランシス・フクヤマ(Fukuyama, Francis)/1952年、米イリノイ州出身。政治学者。ランド研究所や米国務省などを経てスタンフォード大学シニア・フェロー兼特別招聘教授。ベルリンの壁崩壊直前に発表された論文「歴史の終わり」で注目を浴びた(撮影/大野和基)
フランシス・フクヤマ(Fukuyama, Francis)/1952年、米イリノイ州出身。政治学者。ランド研究所や米国務省などを経てスタンフォード大学シニア・フェロー兼特別招聘教授。ベルリンの壁崩壊直前に発表された論文「歴史の終わり」で注目を浴びた(撮影/大野和基)

 例えば、アメリカは第1次世界大戦でドイツを打ち負かす役割を果たしましたが、1920~30年代にはファシズムとスターリニズムの台頭が起こった。45年に再びアメリカがドイツ、イタリア、日本を破りました。戦争に勝利しても永遠にそれが続くわけではなく、挫折を経験しています。であるならば、アメリカが将来大きな挫折を経験する可能性は十分ある。

 ですから、短い期間をとってそこからトレンドを予測することに意味はないと思います。長い歴史的スパンを視野に起きうることを考えなければなりません。これからの50年、民主主義にとっての悪いシナリオを想像することはできますが、過去5年間を振り返ることで簡単に結論を出すことはできません。

(構成/国際ジャーナリスト・大野和基)

AERA 2023年5月29日号より抜粋