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 40代以上の人は覚えているかもしれない。オフィスにたった1台のPCが置かれ、共同で使っていた時代。それがいまや、PCがデスクに一人一台、加えてノートPCまで用意されている職場も珍しくない。それだけPCでできることが増え、価格も安くなっているのだ。

 このPCの低価格化の流れを作りだしたのは、いわゆる「格安PCメーカー」だった。大手メーカーよりも数割安く、スペックはほとんど変わらない格安PCは、オフィスのみならず家庭へのPC普及を加速させた。

 2000年頃に市場を賑わせた格安PCメーカーで、今でも生き残っている企業は少ない。例えば、コンパックやソーテック、ゲートウェイのPCをいま見掛けることはほとんどない。

■コンパック ~老舗格安メーカーはあっと言う間に吸収された

 格安PCメーカーの草分けとも言えるのがコンパックだ。創業は1982年、日本市場に登場したのは92年のことだ。その後、98年に日本DECを吸収するなどの成長をみせた。しかし、終焉は突然やって来た。02年、日本HPがコンパックを買収、コンパックブランドは姿を消すことになる。いまもサーバー製品で「HP compaq」のブランド名が生き残っているが、他の商品は全てHPブランドに統合された。

■ソーテック ~NASDAQ上場(現ヘラクレス)も果たしたが……

 ソーテックといえば、「iMacそっくりのPC」「サポートが悪い」「粗悪品」といった印象を持つ人もいるのではないだろうか。77年に創立され、84年にソーテックに社名変更、格安PC事業に参入したのは97年のこと。大きな話題を呼んだ「e-one」の発売は99年。00年にはNASDAQ(現ヘラクレス)に上場を果たす勢いだった。

 しかし、その後、大手メーカーの値下げの影響もあり、業績は悪化していく。08年に上場廃止、音響メーカーのオンキヨーに買収され、09年10月以降の同社販売PCのすべてがソーテックブランドではなく、オンキヨーブランドに切りかわった。

■ゲートウェイ ~牛柄のPCはDELLとの闘いに敗れ去った

 PC歴が長い人には「牛」とも呼ばれるのがゲートウェイだ。ユニークな広告と「高性能のPCを格安で販売する」方針で急成長し、DELLと双璧をなす格安PCメーカーとなる。日本進出は95年。格安PCメーカーにありがちだった「サポート体制の悪さ」もゲートウェイには無縁だった。
 
 しかし、日本市場からの撤退も早かった。DELLとの競争の激化でアメリカでの業績が悪化すると、01年に日本市場から撤退してしまう。しかし、DELLとの価格競争は、他メーカーにも大きな影響を及ぼし、PCの低価格化を実現したと言える。その後は、07年に台湾のエイサーに買収された。ただし、ゲートウェイのブランド名だけはわずかに残っている。

 90年代なかばから市場を賑わせた格安PCメーカー。その多くは泡のように姿を消していった。しかし、格安PCメーカーの闘いがあったからこそ、PCの低価格化が実現し、普及を促進したと言える。時代のあだ花と言えばおしまいだが、これらのメーカーがしのぎを削った時代を覚えていてもよいだろう。

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