個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は「動線」について。
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30年近く一緒におりますと、動線まで似てくるんでしょうか。
最近、家の中で、僕が動く場所に、妻も動くんです。
あるいは妻が動く場所に、僕が動くんです。
僕が洗面所に行くと、妻、いわゆるマーツーも、別の用事で洗面所に来るんです。
リビング、キッチン、ベランダ、トイレ………とにかく僕が行こうとするところにマーツーが来るんです。
ただ、マーツーは逆の認識を持っているようで、
「どうして私の行く方、行く方、来るのよ」と言われます。
「夫婦は似てくる」とはよく聞きますが、そしてマーツーは「君とは何から何まで全っ然っっ違うんだから似てるわけがないっっっ!!!」と、この説を全身全霊で否定しますが、尋常ならざる確率で、僕の行く場所にマーツーあり、なのです。
もっとも、広い住まいでもありませんし、たまたま同じ場所に動くなんてことはさほど不思議ではありませんが。
さて。
どうしましょう。
この話、全然オチがありません。
少しでも当コラムをお読み頂いたことのある読者諸兄はご存じだと思うのですが、常に僕はこのコラムを、ノープランの思いつきで書き進めております。当コラム、連載開始から5年の月日が経ちますが、5年間、雨の日も風の日も、真夏の灼熱の日も、吐く息白い冬の日も、いつだってノープラン&思いつきで書いてきたのです。
なぜにそんなにノープランと思いつきを誇らしげに自慢してるのか自分でも分かりませんが………あ、ちょっと待ってください。先日こんなことがありました(←ホントに思いつき)。
マーツーが、家の中の各部屋のゴミを、1つにまとめてくれておりました。
その時も、僕が洗面所にいたら洗面所のゴミ、リビングに移動したらリビングのゴミ、僕の部屋に移動したら僕の部屋のゴミ(注・あくまで僕の脳内。マーツーの脳内ではおそらくすべて逆)、といった具合に僕の行く方、行く方に、ゴミの回収にやって来るマーツー。