市川猿之助容疑者
市川猿之助容疑者
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 警視庁は6月27日、自殺幇助の疑いで歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者(47)を逮捕した。人気役者が起こした不可解な事件に、梨園は揺れている。歌舞伎はどうなるのか。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。

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 歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者が自殺幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕されたことで、歌舞伎界に衝撃が走っている。梨園では前代未聞の事件。しかも当人が集客力抜群の人気役者だけに、惜しむ声も強く、興行側も神経をとがらせる。歌舞伎はどうなるのか。

「衝撃」は主に二つに大別される。市川團十郎はブログで「未来の歌舞伎を作っていく仲間としてともに生きてきましたのでただただ、全てが残念です」などとコメントした。歌舞伎の大きな一支柱の喪失という衝撃だ。

■皮肉にも新スター誕生

 もう一つは、結果的に自らも自殺を考えるに至るプロセスが理解できずに生じる衝撃、混乱。「週刊誌報道ぐらいで興行を投げて、結局、自殺を考えるまで飛躍した心の内が分からない、なんで?という驚きや戸惑い」(梨園関係者)であるという。今事件には、閉鎖世界で起き得るパワーハラスメントや性加害・被害の問題が関係しているとみられることから、その受け止めの濃淡が混迷の度合いを深めているともいえる。

 そんな中、気になるのは歌舞伎の行く末だ。まず、さほど深刻ではないと見る向きがある。

 今回の事件で、皮肉にも東京・明治座公演は新スターを生んだ。猿之助容疑者の空白を中村隼人、市川團子が埋め、連日の盛況をもたらした。

 中村梅枝、中村壱太郎、尾上右近、中村米吉、中村児太郎ら若い女形の進境も著しい。かつて故十八代目中村勘三郎は、こんな趣旨のことをもらしていた。悔しいけれど、個々の役者はいなくなっても歌舞伎はなくならない、と。時代や役者の顔ぶれが変わっても、生き続ける歌舞伎の「しぶとさ」を言い当てている。

 ある梨園関係者はこうも言う。

「起訴、公判、判決次第だが、仮に猿之助が復帰でもすれば、それを大々的に打ち出す公演が計画され、歌舞伎ファンは歓迎するムードもある。騒ぎが起きれば、それを活用すらするのが歌舞伎という芸能のしたたかさだと思う」

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