そうなのよ。それが知りたかったのよ! と思わせるタイトルのおかげで(?)、現在ベストセラー街道をばく進中。矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』は、孫崎享『戦後史の正体』などを含む「〈戦後再発見〉双書」シリーズ(創元社)を企画した編集者が自ら筆をとった本である。
 2009年、政権交代によって成立した鳩山由紀夫内閣は9カ月しか続かなかった。普天間飛行場の移設問題に関して、官僚たちは首相ではない〈「別のなにか」に対して忠誠を誓っていた〉という鳩山発言を引きつつ、著者はいうのだ。日本の有権者にはそもそも選ぶ権利などなかった。〈日本の政治家がどんな公約をかかげ、選挙に勝利しようと、「どこか別の場所」ですでに決まっている方針から外れるような政策は、いっさいおこなえない〉のだと。
「どこか別の場所」とは日本国憲法の上位にある法体系、すなわち日米間の密約協定のこと。沖縄の基地問題は「安保法体系」が、福島の原発問題は「日米原子力協定」が支配している。しかも裁判所は、国家の統治にかかわる重要な案件については司法判断を留保するという「統治行為論」の支配下にある。とても法治国家とはいえない日本!
 こうした問題を考えるときのポイントは〈いま私たちが普通の市民として見ているオモテの社会と、その背後に存在するウラの社会とが、かなり異なった世界だということ〉。つまりウラ社会の構造を撃たない限り、オモテの社会についていくら論じても意味がない!?
『戦後史の正体』同様、陰謀史観に引っぱられ気味なのが気にはなる。が、〈どう考えてもおかしな判決が出るときは、その裏に必ずなにか別のロジックが隠されているのです〉という警告には耳を貸すべきだろう。日本は結局、傀儡国家なのだ(しかも日本側の自発的隷従による)と思えば、今後の対処法も見えてくる?戦後史の一面を鋭くえぐった本であることは間違いない。

週刊朝日 2015年1月30日号