故ダイアナ妃の精神を受け継いだウィリアム皇太子夫妻の「積極的に市民と触れ合う姿をアピールする姿勢」も気になるところです。イギリスは、日本とは比べものにならないぐらい階級意識の強い国です。上流・中流・労働者と、歴然とした大別の概念が当たり前の社会において、王族はその頂に君臨する紛れもない特権階級であると同時に、英国の格式と歴史そのもの。
「特権は悪」と決めつけられてしまう現代社会において、王室が「質素・簡素」を標榜し、あらゆる方面へ配慮を示すことは、「特権階級として生き残る術」として大事なのは理解できます。しかし、あまり物分かりの良い顔をし過ぎるのも得策ではない気がします。意識改革とは、言うならば「妥協」であり「迎合」です。
新しい英国王室には、今一度「特権階級」の真骨頂を見せつけてほしいと願うとともに、私は生まれて初めてカミラ王妃に期待をしています。しきりに前髪を直しながら迷惑そうな表情を浮かべていた彼女の戴冠シーンは、「これぞ特権階級!」という傍若無人さに溢れていました。さらにあのグレイヘア。そこいらの庶民では出せないハリとツヤがあります。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2023年5月26日号