私のまわりには、子供を持たない有能な女たちがたくさんいる。子供を育てながら立派に自己実現を果たしている人もいれば、子供を持たない生き方を選ぶ人もいる。それでいいではないか。国の号令の下、お上の都合で子供を増やせだの減らせだのと、私の人生を左右されたくはない。
子供を作ることは義務ではなく、家庭も結婚も様々な形があっていいし、同性同士の結婚も、選択的夫婦別姓も全てつながっている。
少子化対策を国が推進することは、従来の家庭像を押しすすめることであって時代と逆行する。むしろ多様な生き方(結婚や家庭)こそ、現実に自然な形で子供を作ることにつながる。
一時的に人口が減ってもいいではないか。
子供の問題は一人一人の生き方を問われることだ。すでにまわりには、子供を持たない人をはじめ、多様な生き方をする人たちが増えている。現実は常に先を行っている。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2023年5月26日号